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【モチーフ】:双六盤(人生ゲーム)+鯉+鯉のぼり+恋心 【能力】: 想いを揺り起こす程度の能力(対象の恋心を暴走させる。この能力を受けた者は元々僅かながら意識していた相手に病的な恋心を抱いてしまう。) 【上司】:奇跡室長 東風谷早苗 【好物】:ハンバーガー、フライドチキン 【苦手】:納豆 【解説】 早苗が双六盤にミラクルパワーを注いで生み出した奇跡獣。 双六を全身に張り巡らせたかのような姿をした鯉の怪人で、頭にはラブマークが付いている。 大空翠と射命丸文、そして若鷺比瑪子に自らの能力を浴びせ、彼女らがリムグラースであるチルノを見るなり恋心が暴走して追い回した状況を楽しんでいる。 味をしめたコイスゴロー自身は高みの見物と洒落込み、他の場所でも次々と恋心を暴走させた。 しかし結局怒り心頭のグラースにボコボコにされた後に吹っ飛ばされた。 敗北後に奇跡団アジトに帰って来たコイスゴローはなぜか奇跡獣士へと進化して幹部の仲間入りを果たした。
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過去のイベント シェアードワールド「双葉学園」で行われた企画・イベントのまとめページです 月ごとにお題を決めて作品を募集する、定期イベントがあります 定期イベント 2011年 月例お題コンペ 3月 「帰郷」 2月 「雪合戦」 1月 「鍋」 2010年 月例お題コンペ 12月 「ピクニック」 11月 「口付け」 10月 「日常」 9月 「お月見」 8月 「花火」 7月 「ラッキーな体験」 6月 「梅雨」 5月 「GW」 4月 「花見」 3月 「期末テスト」 2月 「バレンタイン」 1月 「正月」 2009年 月例お題コンペ 12月 「クリスマス」 11月 「文化祭」 10月 「ハロウィン」 9月 「○○の秋」 8月 「海」 7月 「学園七夕祭り」 不定期イベント 双葉学園一周年イベント 投稿ページ 一周年記念特別企画 PCへの質問テンプレ 第1回:「醒徒会役員選挙」 →結果を見る 上に戻る 【リンク】 トップページ 基本設定 作品保管庫さくいん シリーズタイトルから検索
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ラノで読む A.D.2019.7.10 16 20 東京都 双葉学園 商店街 「やめてぇええええええええええええええええええええっ!!」 日の沈む、無人の商店街に―― クロームのひしゃげる音が――永劫機メフィストフェレスの、敗北を告げる音が、響いた。 赤く染まる街は、まるで血に染まったよう。 砕けた鋼の欠片が舞う中――しかし、それは動いた。 「!?」 黒い腕が、鉛の腕を掴む。 永劫機メフィストフェレスが、敗北してなお――永劫機アリオーンの腕を掴みあげる。 「まさか――」 腕に力がこもる。掴まれたフレームがひしゃげる。 永劫機メフィストフェレスの全身に力が入り、敗北してなお反抗の意思を見せる。 そう――たかだか敗北した程度で、負けたぐらいの事で、倒れていられるか! 「まだ、動くなんて……っ!」 必殺必滅の時空爆縮回帰呪法(クロノス・レグレシオン)。それを撃ち放った以上、残された力は無く。 その機を狙い叩いた以上、もはや抗う力も無い。 そのはずだ。そのはずなのに――! それでも、永劫機メフィストフェレスは動く。 残された力が無かろうとも。抗う力が無かろうとも。それでも――心は折れぬ。 そう、永劫機メフィストフェレスは契約者である祥吾の意思を反映する。 祥吾は諦めない、祥吾の心は折れない。 敗北など、すでに幾つも経験している。いまさら黒星がひとつ増えた所で、それはただそれだけの事だ。 それでも―― 諦めなければ―― 心折れなければ―― 「うおおおおおおおおお!!」 吼える。 ありったけの意思を込める。 ああそうだ、確かに罠に嵌ってしまった。だがそれでも戦う。戦ってやる。 理不尽に屈してなるものか。 永劫機メフィストフェレスの腕が永劫機アリオーンの腕を掴み、突き刺さったその腕を引き剥がす。 そしてそのままその腕を振り解き、そして殴りつける。 「っぁあっ!」 永劫機アリオーンは、想定外の一撃を喰らい、バランスを崩して墜落、アスファルトに叩きつけられる。 「ふざけんじゃねぇ、舐めんなよこの野郎ッ! こちとら大昔からいじめられ慣れてんだ! たかだか負け犬(このおれ)相手にたった一回勝ったぐらいで、勝ち誇ってんじゃねぇッ!!」 「な――」 そのあまりにもあまりな祥吾の叫びに、桜子たちは瞠目する。 むちゃくちゃだった。論理も筋も通ってない。 そして桜子は察する。 ああ、要するにこの男は―― 「馬鹿?」 それも筋金入りの。 「さすがだな」 それを見て、直が言った。 「確かに君の心は折れない。だが――」 直が表情を変えずに、冷徹に言ってのけた。 そして、異変は起きる。いや、異変に気づく。 その兆候はすでに起きていた。起きていたのだ。 誠司たちが倒れていたのは何故か。 その答えが、これだ。それは祥吾の身体にも起きていた。 膝を突く。 全身に悪寒が走り、臓腑が冷え、頭痛が疼き、吐き気がこみ上げる。 これは――風邪だ。風邪の症状と同じだ。 それも、激しく重い。 こんな時に……否、こんな時だからだ。 「く――」 風が吹く。 敵のいる方角、風上より吹いてくる風が――病を乗せて来る。 初期位置として、祥吾たちは風下にあった事が、勝負の趨勢を決していたのだ。 時間をかければかけるほど――祥吾たちの敗北は確定的なものだった。 そう、マリオンや桜子の仲間の一人に、病原菌(ウィルス)を使うものがいる。正確には、それを操るのではなく、自分の免疫機能の操作である。それを応用して、自分の体に巣食う病原菌を使うのだ。 そしてそれは空気感染で、祥吾達に襲い掛かり、猛威を振るった。 ものの数十分程度で、彼ら全員の体を侵したのだ。 そう、心折れずとも――身体折れれば、人は脆いものだ。 倒れる。 体折(たお)れる。 どれだけ強き意志で抗おうとも――それを凌駕する、身体の異常。 病気。 苦痛や傷は、意志の力でねじ伏せる事は出来る。だが、病は――無理だ。少なくとも、今この場においては。 ゆえに。 「く――そ――――」 そして、時坂祥吾の意識は、闇に落ちた。 時計仕掛けのメフィストフェレス THE MOVIE LOST TWENTY ――La Divina Commedia―― 第二部【煉獄篇(プルガトーリオ)】 A.D.2019.7.10 17 00 東京都 双葉学園 保健室 菅誠司が目を覚ました時一番最初に見たのは、心配そうな春奈・C・クラウディウスの眼差しだった。 「先生……?」 「よかった、これでみんな無事だよ、うん。本当によかったよ~」 「……っ」 身体を起こす。 そうだ、と誠司は思い出す。商店街の戦いを見守っていたら……急に身体に寒気が走り…… 「私達は、倒れて」 「風邪を引いて倒れたんだよ……事情は皆槻さん達から聞いたよ」 話を聞くと、直たちが春奈に連絡をいれ、保健委員への手配もしたらしい。 「……だけど、これは……」 妙に違和感がある。あれだけの悪寒、体調不良。それが完全に消えている。 治ったとしても、病み上がりの疲労や倦怠感も無い。 そう……あの病気そのものが、無かった事になっているように。 「神無さんが能力で直してくれたんだよ」 その言葉に納得がいく。 そう、先日彼女は確かに言っていた。傷を受けたという時間を消す、というような事を。 つまり、あの攻撃で風邪を引いたという時象を消したということだろう。 「神無ちゃん、大丈夫?」 記憶が確かなら、祥吾一人の傷を治すだけでかなり疲弊していたはずだ。 それを、七人分もなんて…… 「はい、大丈夫です……」 疲労を隠そうと笑顔で返答する神無。 「かなり消耗しているようだけど、命に別状はないよ、みんな」 「そうですか……」 その言葉に誠司は安堵する。 「びっくりしたぜ、本当に。お前らがそろって病院に担ぎ込まれたって聞いて」 拍手が言う。 服装は中華料理屋のエプロンのままだった。着の身着のまま、あわてて飛び出してきたのだろう。 他にも、打ち上げに参加する事になっていた生徒達の姿もある。 敷神楽鶴祁が言う。 「……事情は聞いたよ。大変な事になつているそうだね」 「……そうなんス、なんていったらいいか、とにかくヤバイっスよ」 市原が頭を抱える。市原だけではない。ここにいる全員が同じ心境だった。 仲間が、あろうことか「世界を滅ぼす」などと言われ、そして風紀委員会からの捕縛命令が下り、倒され連れ去られた。 まったく持って、悪い冗談みたいな一方的で、かつ出来の悪い展開だ。 「……どうするの? それでこれから」 遠野彼方が言う。 「どうするって……」 その言葉に、皆が黙る。 判っているのだ、理不尽すぎる。だから助けないといけない、と。だがそれは、風紀委員と敵対するという事だ。 ましてや、風紀委員会だけではない。高槻直たちが動いていた。彼女達は、学園の指令で動く異能者チームだ。つまり…… 「双葉学園と、敵対するってこったろ……」 誰かがそう言った。 学園に敵対する? 在りえない。 だが…… 「必ずしも、敵対するって訳でも……ないし」 そうだ。 時坂祥吾に対する理不尽な待遇、それを緩めるように陳情すればいいだけじゃないか? 何事も力で解決すればいいというわけではない。ましてや相手は同じ人間なのだ。無理に戦う必要は無い。 そう、彼女達が時坂祥吾に行った戦闘行為、それは……時坂祥吾がバカだから、最初から素直に従う事は無いだろうという、正しい判断によるものだろう。 誰だって、お前が世界を滅ぼす事になるから捕まえる、と言ったら反発する。ましてや相手が馬鹿なら当然だ。 それに、直たちの言葉を信じるなら、国際風紀委員会連盟……通称D.A.N.T.E.……彼らから祥吾を守る意味合いもあるという。 それを考えるなら、このまま趨勢を見守るのもありではないか? そう考えていると、ドアがけたたましい音を立てて開く。 「大変!」 息を切らしながら、神楽二礼が駆け込んできた。 いつもの「~っす」口調でないということはね彼女自身本当に焦り、気が動転しているのだろう。 「ふっ、風紀、委員の……先輩に、っ、聞いたけど……」 肩で息をする二礼に、春奈が水を差し出す。 それを一気に飲みほして、二礼は言った。 「時坂先輩、下手したら……殺される!」 A.D.2019.7.10 17 35 東京都 双葉学園 風紀委員特別棟 時坂祥吾が目を覚ました場所は、白い部屋だった。 白い壁、白い床、白い天井、白いベッド、白いカーテン、白い鉄格子。 病的なまでに潔癖なそれは、白い部屋――というより、白い牢獄だった。 「……」 全身がだるい。疲労感と倦怠感。 病み上がりのようだ。いや、事実そうなんだろう。 そして、さらには首と両手に違和感がある。 「……囚人かよ」 そこには、ご丁寧にも手枷と首輪が嵌められていた。 じゃらり、と音がする。 部屋の内部を見回す。 無人だ。ここには自分しかいない。 ならば……とにかく脱出を試みるべきだ。 そして祥吾は、内に在るメフィストフェレスに語りかけようとし―― 瞬間、全身を電流が駆け巡った。 「がぁあああああああああああああああっ!?」 身体が痙攣し、無様なダンスを躍らせる。感電死するほどの威力ではないが、容易に身体の自由を奪うほどの電流。 「う……ぐぇぅ、あ……っ」 病み上がりに加えて電流を受け、祥吾はベッドから床に倒れる。 「異能を使おうとしても無駄よ」 電流の余韻に苦しむ祥吾に、冷徹な声がかけられる。 「……ぁ……?」 首から上を動かして祥吾はその声の方向を見る。 いつのまにか扉が開いていて、そこには三つ編みとめがねの少女が立っていた。 「おはよう。といっても朝じゃないけど。よく眠れた?」 「お、お前は……?」 「束司文乃。風紀委員よ」 見下ろしながら、文乃は名乗る。 「それ」 文乃は手錠と首輪を目線で差して言う。 「超科学研究の産物なの。というより副産物、失敗作ね。魂源力を電撃に変換して敵を攻撃する為の武装として作られたけど、電撃に変換するまでは出来たけどそれをコントロールするのが不可能だった、失敗作」 肩をすくめて、文乃は笑う。 「魂源力を感知して問答無用で電撃に変換するから、違反者達の拘束にもってこいの便利な道具」 「……それでかよ」 祥吾の異能は、永劫機との契約者としての適正、である。そして永劫機を召喚し操る時だけでなく、自信の魂の内にある、メフィストと共有する内的世界へのコンタクトも……メフィへと語りかけるときも、魂源力が働くのだろう。 この戒めは、それに反応して電撃を放ったのだ。なるほど、これでは確かに異能は使えない。 「大変だったようね。あの人たち相手に歯向かうからそういう目に会うのよ」 「……っ、けしかけたのお前らだろうが……!」 身体を起こしながら、祥吾はにらみつける。 「まあ、それは否定しないけど」 その視線を平然と受け流す文乃。 「俺を、どうするつもりだ」 「どうも何も……風紀委員に捕まった素行不良生徒がどうなるかは決まってるわ。誰も手出しの出来ない懲罰施設で矯正するまで奉仕活動よ。そう、誰にも手出しの出来ない場所で」 「……あの世とか言うんじゃないだろうな」 「ある意味そうかもしれないけど、私たちは貴方を殺すつもりなんて最初からないわよ」 読解力無いね、と呆れ顔で文乃は言う。 「どういう事だよ」 「高槻さん達が言わなかった? 貴方は狙われている。ええ、まあそれは私達風紀委員会も確かに貴方を狙ったけれど」 「……は、世界を俺が滅ぼすって? 本気で信じているのかよ、お前ら……!」 「信じてないわよ」 「は……?」 あっさりと否定する文乃。 「まあ問題なのは、貴方が世界を滅ぼすかどうかじゃない。 D.A.N.T.E.が、「時坂祥吾が世界を滅ぼす」と断定してしまった、という事実が問題なのよ。 何故だか知らないけれど、彼らはそれを確定事項としてしまった。 私達はあくまでも、貴方がそうなる可能性がある、ぐらいにしか思っていない」 可能性がある、ただそれだけでこんな仕打ちもひどいものとは思うのだが。 「実際に、予言系能力者の何人かはそういう話を出してきている。 残念ながら証言もあるの。だから風紀委員も貴方を拘束した。 でも重ねて言うけれど、私達は、同じ学園の生徒をそんな理由で殺すつもりは無い。 貴方が世界を滅ぼすというのなら、滅ぼさせないように矯正するだけだから」 「で、矯正施設に放り込むってかよ……」 いい迷惑だ、と祥吾は吐き捨てる。 上から目線の圧倒的正義。なるほど、今まで風紀委員のお世話になったことは無かったが、なるほどどうして厄介なものだ。 一般生徒から嫌われ、煙たがられるのも頷けるものである。 その祥吾の反感をよそに、文乃は言った。 「安心していいわ。私たちは貴方を守ってあげる」 A.D.2019.7.10 18 00 東京都 双葉学園 保健室 「それは本当なの?」 春奈の問いに、二礼は答える。 「はい、風紀委員棟で誰かが話してたのを確かに聞いたっすよ……」 それが誰かはわからないが、確かに話していた。 しっかりと聞こえたのだ。まるで自分に教えているかのように。 「……不自然ね」 「まあ、確かにそう思うっすけど……」 それを差し置いても、捨て置けるような事ではない。明らかにこれはやりすぎだ、と二礼は思う。 風紀委員として、D.A.N.T.E.の恐ろしさは知っている。 あれは狂人の類だ。その集まりだ。双葉学園の風紀委員であの危険度にためを張れるのは、風紀委員長のデンジャーぐらいだろうと思う。 強さではなく、危険性として。 正義のためならば、殺人も平気で是とするその思想。 二礼も一部では外道巫女と呼ばれるほどに大概に無茶なほうだが、次元が明らかに違う。 「ていうか、それならなおさら考えてるヒマねぇだろ……!」 孝和が声を上げる。 「状況が変わってきたんなら……もう学園に対して喧嘩がどうかとか、気にしてる暇じゃない」 「そうっスよ、後のことは後のことで、今はそのダンテとかに時坂先輩を渡さないことが大事っス!」 市原も言う。 「……そうね、うん」 春奈も決意する。 このまま生徒を死地に黙って向かわせる訳にはいかない。 そしてそのために生徒を死地に向かわせるも同然の、この結論に対する矛盾。 学園の教師としてあるまじき行動かもしれない。だけどそれでも…… 生徒達の信念を曲げてはいけないと思う。 それがもし間違っているのなら、全力で正すのも教師の仕事だ。だが、今回は明らかに、風紀委員達の軽挙妄動で勇み足だ。 おかしい。 春奈の中の何かが、そう訴えかけていた。 「私も、サポートする」 「っしゃあっ! せんせーさんがいれば百人力っス!」 春奈の言葉に、市原がガッツポーズをとる。 「うるさいよ、市原」 緊張感がない、と嗜める。だがそう言いながらも、誠司の顔も緩む。ああそうだ、やはりこういう緊張感の欠けているような空気がいい。 悲痛で悲壮なのは、この双葉学園の生活には似合わない、と思う。 「なるほど。ええと、じゃあ僕はどうすればいいかな」 「遠野先輩は、お気持ちだけで十分っスよ。相手は風紀委員で、異能者もたくさんいるっスからね。 美味いジュースでも買って待っててくださいっス!」 サムズアップで決める市原。 「じゃあ俺は美味いチャーハンでも……」 「あんたは一緒に来るっすよ」 二礼が拍手に言う。 「ええ、いや俺だって心配だけどよ、俺は異能が……」 敬が口ごもる。 彼の名誉のために言っておくならば、決して敬は臆しているわけでも、祥吾が心配でない訳でもない。 ただ敬は自らを弁えているのだ。 彼は異能者ではない。並みの一般人よりは強い程度には魂源力が確認されてはいるが、能力としての発現も見られないのだ。 そして、他の異能者が何人もいるのであれば、自分が出張っても逆に足を引っ張るのではないか――そう思った。 相手がただのラルヴァや異能者なら、敬とてここまで考えない。だが相手は危険すぎる。自分が軽々しく出ることで、より危険に仲間を巻き込むかもしれない。 だから敬は、彼にしては珍しくそこまで考えて―― 「あの」 神無が言う。前かがみで、それは胸を強調するようなポーズで。 「一緒に来てくれたら……挟んであげます」 「俺に任せろ!」 一発だった。 「……あれはあなたの入れ知恵?」 真琴が、二礼に聞く。 「くっくっく、何の事だかわかんねぇっすねぇ」 「神無さん、自分が何言ったか判ってないと思うんだけれど」 「別に何で何をはさむかなんて言ってないっすよ。アレが下世話な事言い出したら、万力で挟んでやればいいだけっすよ?」 「……」 成るほど、外道巫女と呼ばれてるのは伊達じゃないな、と真琴は内心思った。 きっとこんな感じでずっとからかわれ続けたんだろうな、今までも、そしてこれからも。 だが、真琴は気づいていなかった。 傍から見たら――孝和に対する真琴もまた似たようなものだと。 まあそれは、この場では本当に心からどうでもいいことではあるのだが。 「まあ、それはともかく、だ」 孝和が言う。 「あいつは、悪い事なんてしてない。 これから世界を滅ぼすかも知れない? そんなので捕まったり。ましてや殺されたりしてたまるか」 その言葉に全員が頷く。 「そうだね。やってもいない罪を償う事なんかない。罪に問われる謂れも、罰を受ける責任だってないよ」 遠野がそれに続く。 「全くっス。絶対に助け出すっスよ」 そう、絶対に助け出す。 A.D.2019.7.10 19 00 東京都 双葉学園 第八封鎖地区 双葉学園には二十年近い歴史があるといわれるが、それは実は誤りである。 確かに教育機関としての歴史は十八年だ。だが、その人工島としての歴史はもうすこし長い。 様々な計画、思惑が絡み合い作られた人工島。それは一説には、ラルヴァの増加を予見していたものが関わっていたと言う噂もあるが真実は定かではない。 だが、学園関係以外にも様々な施設がかつて存在していたのは周知の事実である。その全ては現在は学園関連施設、研究施設に置き換わっているか、あるいは廃棄された跡が残るのみだが。 そしてそういった廃墟は危険なために封鎖されている事も多い。 そういった廃墟を、学園やその他の組織が秘密裏に別の用途として利用している、というのは……都市伝説レベルの噂でしかなかったが。 しかし、覚えていて欲しい。 都市伝説とは、根拠があるからこその都市伝説だ。 火の無いところに煙は立たない……というあれである。 いわく、外部の組織……聖痕やオメガサークルなどの中継基地がある。 いわく、醒徒会の盗撮写真などを高値で取引している闇マーケットがある。 いわく、潰れたはずの違法異能研究機関が未だに存続している。 そして、いわく……風紀委員会の特別矯正施設が、そこに存在している。 「ただの噂かと思ってたけど」 真琴が周囲を見回しながら言う。 なるほど、典型的な、放棄された廃墟だ。こんな所まであるのだから、双葉学園も広い物だと思う。 「実は私も噂程度に思ってたっすよ、そういうの。まあ見習いだから知らされてなかったのかもしれないっすけど……」 それにしたって胡散臭くて、怪しすぎて…… 「ゾクゾクくるっすね」 「いやそれはどうかと思う」 気持ちはわからないではないが。 「ん、なんでしょうあれ、ねぇお姉さま」 何故かついてきている米良綾乃が、前方を指差す。 本当に何故ついてきているのかは判らないが、戦力は多いほうがいいだろうと動向を許可した。 というか許可しなければ無理やりついてこられて引っかき回されるのが目に見えていた。 「どれだ」 「あれ、あの……フェンスの所に」 見ると、ぐるりと広く廃墟を囲むフェンスがある。有刺鉄線でぐるぐる巻きにされた、いかにもという立ち入り禁止のフェンス。 そのフェンスの中に、鉄格子の扉がひとつ。 扉の上には、鉄の板に碑文が刻まれていた。 Per me si va ne la citta dolente, per me si va ne l etterno dolore, per me si va tra la perduta gente. Giustizia mosse il mio alto fattore; fecemi la divina podestate, la somma sapienza e l primo amore. Dinanzi a me non fuor cose create se non etterne, e io etterno duro. Lasciate ogne speranza, voi ch intrate 「なんて書いてあるんでしょうか? これ」 それを見て鶴祁が言う。 「これは有名だよ。神曲に出てくる、地獄門の碑文だな。 “我を過ぐれば憂ひの都あり、 我を過ぐれば永遠の苦患あり、 我を過ぐれば滅亡の民あり 義は尊きわが造り主を動かし、 聖なる威力、比類なき智慧、 第一の愛我を造れり 永遠の物のほか物として我よりさきに 造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ、 汝等こゝに入るもの一切の望みを棄てよ” ……そう書いている。脅し文句にしては陳腐だな」 鶴祁が碑文を朗読する。 「脅し文句っつーか、研究施設跡には似つかわしくない文面ですね、これ。 でもお姉さまとなら地獄の底までひぁうぃごうです!」 「そうか、頼もしいな」 綾乃の熱烈アプローチを素で受け流す鶴祁。たぶん判ってないのだろう。 「……上等じゃないか」 拍手がそれを聞いて拳を握る。 「要するに、ケンカ売ってる訳だ」 「意訳バリバリだなそれ。ま、合ってるか」 和孝は、その鉄格子の前に立つ。 「ボロボロだな……っと!」 言いながら、鉄格子を蹴破る。錆付いた鉄格子は耳障りな音を立てて転がった。 「行きましょう」 春奈が促す。 一同はフェンスをくぐり、先へと進む。 「止まれ」 廃墟の風に乗って、声が響いた。 「……!」 その声に身構える。 「……皆槻さん」 春奈は声を硬くする。 正直、会いたくなかった。ここで立ちはだかるのが、たとえば大人の警備員だとか、外部の人間だとか、そういった展開であればどれだけ気が楽だっただろうか。 だが、春奈の予測は、残酷にそして冷徹に、実現した。 生徒を率いて生徒と戦う。なんというふざけた悪い夢だろうか。 だがそれでも、選んだのは春奈自身だ。避けられない戦いなら、止められぬ争いなら、せめて双方に被害のないように、最短で決着をつけさせる。 そのために、彼女はここに立っている。それが信念だ。 そして――信念なら、おそらく春奈たちの前に立ち塞がる彼女達もまた持っているだろう。 「お揃い、か。うん、しかしあれだね、なんだか私達が悪役のようだ」 直は苦笑する。 「そう思うなら、どいてくれると嬉しいんだが」 敬が一歩前に出て言う。 「それは出来ないな。これも仕事だ」 「仲間を売り渡す事がかよ!」 「違うな。世界を守ることだ」 クレバーに言い放つ直。 だが直とて、本質的には冷徹ではなく、むしろ熱い方だ。本心では常に戦いを望み、強者を欲している。双葉学園に来たのもそのためだ。 そして世界を守るために弱いものを犠牲にする、などという行為・思想は彼女の最も嫌うことである。 本来の彼女なら、むしろ風紀委員や双葉学園そのものにその拳を向けてもおかしくはないだろう。 だが今回は、放って置けば多くの弱い者達が傷つき、死ぬだろうということを理解しているし、それに彼をこの先の矯正施設に入れる事は時坂祥吾のためでもあることもまた理解している。 己の性質を理解し、鋼の心で律する。それが高槻直という人物だ。 ありていにいえば、「大人」であると言ってもいい。 そしてその態度は、敬や和孝たちのような……いわゆる熱血少年なタイプにとっては我慢ならないものでもあった。 「だったら……コレで語るしかねぇってことか」 敬は拳を掲げる。 「そういうことだな」 直もまた、拳にブラスナックルを嵌める。 「あと、言わなくても当然の事だが……私たちだけじゃない」 その直の言葉によって召喚されたかのように。 廃屋の屋根を砕き、3メートルほどの鋼が舞い上がる。 「永劫機アリオーン……やはり……!」 「彼女達もいるということっスね」 「そういう事だ」 量産型永劫機にマリオンの魂を付与し完成させた桜子とマリオン。 そして彼女達が居るなら、夕刻の戦いで皆を病気にさせたその原因であろう、ヘンシェル・アーリアもまたいるはずだ。 その三人がいるなら、彼女達とかつて行動を共にした他の四人もいると見て間違いないだろう。 そしてその通りに、七人が姿を現した。 皆槻直、結城宮子、そして彼女たち七人。想定どおりのメンバーだった。 夕方の戦いのときに確認された人物とそこから想定される人物たち。 そう、想定どおり、だ。 ここに赴く前に、話し合ったとおりに…… 『……作戦を立てるよ。あなたたちの言うとおり、相手が高槻さんたちのチームとフリージアさんたちのチームなら……確かに厄介だよ。 だけど、彼女達は、特にフリージアさん達は、悪い意味で有名だったから』 彼女達は、かつて双葉学園に対して叛旗を翻した過去を持つ。 その仔細もまた生徒達には伏せられているし、春奈自身もそこを突くつもりは無い。 だがそれでも、その事実は有名である以上、そこを利用する。 不良生徒が、特に異能者が醒徒会や風紀委員会によって補導されたあと、「反省を促すための奉仕活動」としてラルヴァ討伐などに参加させられる事はよくある事である。 そして得てして、そういう生徒達は「醒徒会の犬」「風紀委員の犬」となってしまった境遇に対して不満と怒り、そして屈辱を覚えている事が多い。 彼女達もまた、事件を起こしその結果として風紀委員たちの下で今回の仕事をしているのなら…… 「ぷふー」 彼女達を見て、二礼が噴出す。 「?」 その姿にヘンシェルたちは怪訝な顔をする。 そして…… 「負け犬がいるっすよねえ、見て見てホラ! 学園にケンカ売って負けて尻尾振ってる負け犬!」 神楽二礼の悪口が、炸裂した。 『挑発……っすか?』 『うん。あの子たちの一番危険なのは、まず南雲小夜子さんの暗示能力。 それを無効化するために、意識を引き付けないといけないから……』 そこで小細工を弄したところで、カテゴリーFとして苛められてきて、そして今なお苛められ続けている彼女達に効果は薄いだろう。 ならば逆に単純なほうが効果が出る。 そこで、拍手敬推薦、悪口言わせりゃ天下一品と評判の彼女の出番、と言うわけだ。 「ねー聴いたっすかおくさーん! 盛大にテロ起してズタボロに負けたそうですわよー!」 大仰に肩をすくめ、口に手を当てて大声でしゃべる二礼。 「負けるだけならまだしもそれで風紀委員の使いッ走りたぁ、プライドねーんすかねー?」 「……っ!!」 そのあまりにも馬鹿にした口調言動に、七人は怒りに息を呑む。 「何も、知らないくせに……ッ!」 「知るわけねーっす。知って欲しけりゃ説明すればどーっすかー? 百文字以上五十文字以内で提出してくださいっす。読まねーけど。 だいたい言いたい事があるなら口で言えばいいのに短絡的にテロに走るなんてそれでも文明人っすか? もしもこの世にぱんつがなかったら好きなあの子にどうして会いに行こうさよなら文明っすか?」 「馬鹿にして……!」 「事実をありのままに言うのが馬鹿にすることなんっすかふーんへーんほほーん」 (ひでぇ……!) 今、みんなの心が一つになっていた。 学園に歯向かう、それは並大抵の事ではない。今の自分達が仲間を助けるために決死の決意を決めたように、彼女達にも守るべきもの、貫くべき意志、果たすべき願いがあったのだろうとは誰にだって想像がつく。 無論、二礼本人にも。 (まあ、だからこそ効果的なんすよねぇ) 自分が正しいとと思っていようと、過ちを犯したと反省していようと……どちらにしても、それは本人にとってみれば聖域だ。 それを突かれて平然とできるなら、本人達にとっては些事と変わりない。 そして……双葉学園に牙を向く決意を固めさせるほどのそれは、彼女たちにとっては本当に大切なものだろう。 だからこそ。 「力づくでモノ言わそうなんて、所詮はその程度のテロごっこなんすよねーぇ。だから負けてあっさりと醒徒会や風紀委員に尻尾振って宗旨替えできる。いやその変わり身の速さはソンケーするっす」 徹底的に、小馬鹿にし、嘲笑した。 そして当然、それを看破できるはずもなく、彼女達は激昂する。 『ほんの少しでもいい、挑発して主導権をこちらのもの出来れば……』 先手必勝。それで布陣は揃う。 『彼女達の能力と戦い方は記録されてる。そのデータを元に作戦を組めばやっつけられるよ』 そして、金剛の皇女の真価が、ここに発揮される。 たとえ、大規模ラルヴァ戦でなく、その異能のリミッターが解除されなくとも…… 春奈・C・クラウディウスのその真価は、その作戦能力と指揮能力にあるのだ。 「うおおおおおおおおおおっ!!」 そして想定どおりなら、なによりもまして先手を打つ事が最低条件。 全員が散る。 分散する理由はただ一つ。 南雲小夜子の異能をまず封じる。 その彼女の異能とは、「視界内の生物を暗示下におく」ことだ。 精神支配系の異能力。これは一番に封じておく必要性がある。 そこで、小夜子が登場した瞬間にとにかく挑発する。 そして気を引きつけつつ、自分達は分散する。この場所は廃墟なので、隠れる場所には事欠かない。つまり、視界に入らなければ、視認さえされなければ――その支配は防げる。 「っ!」 その作戦に気づいた九十九唯は、必死に心を落ち着け、そして異能を発動させる。 「……呪詛諸毒薬 所欲害身者 念彼観音力 還著於本人」 陰陽道斑鳩流玄武、奇門遁甲の陣。 強力無比な結界の術だ。 おそらく――小夜子の異能に対抗して分散した以上、次の手は、その小夜子を潰しにかかるだろう。 ならば彼女を結界で守ればいい。そうしておけば、視界内に入る相手を暗示下における。 無論、相手も歴戦の異能者たちだ。精神支配系の異能にそう易々とかかってくれるとは思えない。 だが、それでもこの切り札があるとないとでは大違いだ。ゆえに鬼札は守らねばならない。 そして同時に、仲間達の行動を阻害しないために―― 結界は最小限。自分と小夜子だけを覆い、発動させた。 そしてそれは当然ながら、春奈も織り込み済みだ。 ゆえに、彼女がとった作戦とは―― 「行けぃっ」 「了解ッ!」 真琴が和孝に触れる。 瞬間転移の異能で、和孝を跳躍させる。 その場所とは―― 「えっ」 小夜子が素っ頓狂な声をあげる。 その声に唯たちが気づいたときには、すでに遅かった。 結界を通り越し、その内部に和孝は転移していた。 なるほど、いかに強固で、通り抜ける事が叶わぬ強力無比な奇門遁甲の陣も―― その内部に瞬間転移するならば、その壁は意味を成さぬ。 そして、和孝の行動はすばやかった。 「ごめんなっ!」 小夜子の首に両手を回し、極める。いわゆるチョークスリーパーホールドだ。 「……っ!」 首の脈を押さえて血流を止め、脳に酸素が行かないようにして昏倒させるプロレス技である。 後ろから極めてしまえば、視界内に入る事も無く、洗脳される心配も無い。 そして、締め落とすまでの時間は、確かに和孝は無防備では在るが――それは奇門遁甲の陣が逆に守ってくれる。 そう、小夜子のみを確実に守ろうとした防御結界を敷いた事が、唯のミスだった。 それに気づき、結界を解き、救出に動くまでの数秒間―― それで十分。それだけあれば、和孝は女の子一人をシメ落とすぐらい造作も無かった。 「――あ」 かくん、と人形のように小夜子の身体から力が抜け落ちる。 「よくもぉっ!」 仲間を倒されフリージアが激昂し、ヘンシェルが弾かれたように拳を振るう。 だが遅い。 誠司と市原、レスキュー部の二人が走り、ヘンシェルとフリージアに襲い掛かる。 「だあああっ!」 振るわれる鉄棍と飛び蹴り。不意を突かれ、そのまま四人はもつれ合うように風下へと転げ落ちる。 「っ! 二人ともっ!」 そしてそれを追おうとする、永劫機アリオーン、そしてマリオン達。 だが宙を滑るその機体に肉薄するのは―― ――天地は万物の逆旅にして、 光陰は百代の過客なり。 言葉が響く。 それは呪文。それは聖約。それは禁忌。 そう、紅玉懐中時計に封印された時計仕掛けの天使の機構を開放するキーワード。 而して浮生は、夢の若しなり――! 力が、爆現する。 全長3メートルの巨体。 チクタクチクタクと刻まれる真紅のクロームの巨躯。 流れるような流線型のデザインは、流麗にして苛烈。 各部から露出した銀色のフレームが規則正しく鼓動を刻む。 まるで羽衣のような飾り布が、燃え上がる陽炎のように揺らめき、その美しさを際立たせる。 それは大地の力を秘めた赤き怒り。 これこそが、その危険性により計画凍結・破棄された、時計仕掛けの天使(クロックワーク・アンゲルス)―― 「永劫機(アイオーン)……アールマティ!」 桜子がそれを見て叫ぶ。 「そうだ。君達のと違い、純然たるオリジナルだよ」 「……っ、マリオンっ!」 ある意味、ここにマリオンは二人いる。量産型永劫機の機体に彼女の魂を同調させて生み出したアリオーン。 そして、もう一人、桜子純正のヒエロムスマシンのボディに魂を宿した彼女。 二人がかりでなら、恐れる事は無い。永劫機メフィストフェレスとて追い詰めたのだ。 だが―― 「私を忘れてもらっちゃァ困るっ! 愛の炎がこの身を燃やす、メラメラ中学生米良綾乃、ここに推参ッ!」 鶴祁とて、また一人ではない。 「綾乃君、彼女は君に任せる」 「いぇっさーお姉さまっ!」 そして、アールマティ。彼女にもまた当然ながらその人格が存在する。 「往くぞ、アールマティ」 『はい、お嬢様』 故に、三対三。双方共に、相手にとって不足なし。 かくして分散された中、直と宮子は眼前の敵に集中する。 そこに立つのは、敬と二礼だ。 「あらあら、バラバラっすね。いいんすかね、戦力分散っすよ?」 「構わないさ」 その挑発に、直は拳を掲げる。 「結果は同じだ」 その眼差しに迷いは無く。 (あちゃあ、やりにくい相手っすねぇ、この人) 二礼は嘆息する。 この手の相手に、挑発などの精神攻撃は効かない。良くも悪くもまっすぐな相手。 手加減も何もなしに正面からぶつかってくるだろう。 「俺がやる」 敬が前に出る。 拍手敬は肌で感じる。目の前の相手は強い。女だとか、乳だとかは関係なく、強敵だ。 本気の全霊でかからねば――打ち破れないだろう、と直感する。 「いい気迫だ」 その敬の覚悟を肌で感じながら、直は笑う。 「そっちこそ」 敬は笑える心境ではなかったが、それでも答える。 「いい風が、吹きそうだ」 「私達は、どうしよっか」 「そうっすねぇ……」 宮子は、治癒系能力者。 一方二礼は、神の召喚というもので、どちらも補助系の異能と言ってもいい。 治癒能力は触れねば使えぬし、二礼の力も戦場で行うには時間もかかりすぎるし隙も多い。 故に…… 「まあ、無駄に潰しあってもね。私は、ナオに賭けるわ」 「そっすね。まあ私は賭けないっすけど」 二礼は相変わらずだった。 風が吹く。 荒廃した空気をはごんで来る。 春奈は、その風の中、教え子達の戦いを見守っていた。 「みんな……がんばって」 春奈のやるべきことはもうない。 あとは、自分の生徒達を信じるのみだ。 なるべく傷つかないように、と。それは偽善者なのかもしれない、と春奈は自重する。 だってそうだろう、どれだけ言い繕おうとも、この地に生徒達を導き、ぶつけ合わせたのは自分だ。 「先生……先生は、悪くないです」 傍らで、神無が言う。 「……」 その言葉に、どう答えていいものか、春奈はわからない。 悪いのは誰か、悪いのは何か。何が正しくて間違っているのか。 そんなこと――わかろうはずもない。 でも、それでも。 「大丈夫、だよ」 春奈は傍らの教え子に言う。 「……必ず、みんなで帰らなきゃ」 「……はい」 双葉学園第八封鎖地区――地獄門。 一切の望みを捨てた者たちが立つ事を許されるその地で、 今、総力戦が始まった。 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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クラブマスター みるも クラブレベル 通称B級指針 当事者はA級だと言い張ってる残念な方々。 ペリ鯖隔離スレ51から引用。 598 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! :2010/09/06(月) 21 36 19 ID QaWMVr+n0 (1 回発言) 月下落とすならロルハ落ちが修正された今だろ 過疎化も進んでる様だしな 攻めもしない雑魚クラブと一緒にされるのは気に入らないね B級とか言いたい奴は勝手に言ってろカス共 599 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! :2010/09/06(月) 21 57 04 ID Sa2dICWq0 (1 回発言) 本気だすからなw あとから永久指針すごーいって言っても入れてくれないからなw 隔離のB級ども明日見てろw 結果が楽しみです^^ 現ペリ鯖最強のクラブに発展しました! 前回の要塞敗戦時は約40名で攻め込んだにも関わらず無残に散ってしまった。 吸収合併により増員されたメンバーの活躍で鯖最強クラブから要塞を奪還。 激闘時間は僅か10分を強調するB級はある意味、無敵と言えよう。 再三再四にわたりサブクラブで要塞申請を繰り返してる疑惑あり。 これらのサブクラブはB級が要塞とってる場合は誰も攻めてこない事が理由だが確証はない。 セコイで有名なB級らしく羽毛狩り・血羽集めを少しでも長く行うための手段であろうか? DOPでは常に誰かから攻撃される嫌われ者の集まり。 ALやCROWS、その他のクラブからも狙われていてお守り集め中にボコボコにされてる姿が目撃されている。 PS(笑)は極めて低く個々の実力は底辺。 組織的な行動も苦手で常に脳内戦略で終了となる。
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ラノで読む 騒がしい保健室の事件記録2 『質量考察 後編』 ■4 「え、どういう事ですか!?」 堀衛が発した言葉に対し、数秒間の空白を空けたのち、困惑を隠せない声で能都が聞き返す。奈央も激しい戸惑いを感じ、泡を食った様に取り乱す。 「い、いいい、一体その結論をドコからどーやって引き出したんですかっ、先生ぇっ!?」 サスケェみたいな口調で唾が飛んだ。 「うむ、冗談にしては度が過ぎると思う」 やや非難めいた視線を夏鈴が向けてくる。 「そうだな、どう説明したものやら」 問われた保健医自身も、上手く文章表現ができない様子だった。 「じゃあ順番に整理していくか。 深夜まで時間も在るしな。さて──全ては瑞樹が思い出した言葉、その中にある」 結論を話すよりも段階的に促した方が楽だと踏んだのか、彼女の逡巡はすぐに終わった。 持っていた箸を茶碗の上に置くと、顔に疑問符を浮かべたままの三人を見る。 そして彼女は、文字にしてみると二八文字しかない謎の文章を、するりするりと紐解いていった。 「まず最初の推論」 そう口にする堀衛の目に、鋭い眼光が灯る。 「話し手はうんざりしている」 「まぁ……確かにそうだな。推論というか、文章の中に含まれているわけだが。それでも短い文章の中にある、確かな情報だ」 幼馴染の返答と指摘に「その通り」と能都も賛同する。 「第二の推論。彼はこの七キログラムという重さを想定していなかった」 白衣のポケットから缶コーヒーを取り出し、プルタブを開けて口をつける。 「でなければ『ましてや』なんて演技がかった単語を使わず、ただ単に『明かりが無い所で七キロ運ぶのは重すぎる』──とか言えばいいだけの話だ」 「うーん……その辺りは分かりきった感じがしなくもないですねー」 「推論というのは、まず『分かりきった事』を積み重ねていくものだぞ、瑞樹」 ふん、と鼻を鳴らす。 「次の推論だが……能都、何か分かるか?」 ぐびり、とコーヒーを喉の奥へ流し込むと、今度は四角い男子生徒へと矛先を向けた。 「ええっ、ここで俺に振るんですか?」 動揺しながらも、その視線の刺突を受け止める能都の形をした立方体。唸りつつ、何とか彼女の期待に応えようと頭をひねる。 やがて「たぶん……」と、自信が無さそうに前置きをした上で、二八文字から推測できる事柄を口にする。 「彼はスポーツマンではないと思う。 アウトドアを趣味にしていたり、土木作業とかの職業でもないんじゃないかな」 「うーん。それは説明してくれないと分かんないよ、麻太郎」 「えーっとだな。これも『ましてや』という部分がヒントにして考えてみたんだけどな」 当惑して口を尖らせる女装少年に、能都は微笑んでみせた。目尻が下がっており、夏鈴が冷たい視線を送ってくる。 保健医は無言でそれを制し、そして同様に言葉無く続きを促した。 「スポーツをしている人間にとって、筋力のトレーニングは必須だ。屋内だろうが屋外だろうが、とにかく激しい運動に耐えるには筋力とスタミナが必要なんだ」 奈央は、ふと視線を下方修正する。能都の腕は太い。自分は当然の事ながら、同年代の男子と比べてもサイズが違う。さらに胸板も厚い。肥満体型などではなく、幼少の頃から空手を習い、純粋に鍛え上げてきた筋肉によるものだ。 なるほど、彼の言《げん》には説得力がある。 「ああ、成る程、分かったよ麻太郎。 身体を鍛えているはずの人間が、七キロの荷物で愚痴を漏らすはずないもんね!」 「ああ。七キロといえば、普段の鍛錬で使うベンチプレスよりは軽いんだ。 そりゃあ一般的なダンベルよりは軽いだろうけど、それでも愚痴るほどの重さじゃない。 七キロよりも重いものを運んだりする機会が多い職業の人間や、普段から身体を鍛えている人間なら、ただ持って運ぶだけで文句を言ったり、それこそ『ましてや』なんて言葉も出てこないと思う」 「さすが鍛えてる『だけ』の事はあるな」 セリフの一部を強調しつつも、夏鈴は素直に感心する。 「ふむ。しかし能都。男は後半で『明かりが無い』と言っているぞ。いくらスポーツマンでも、重い荷物を抱えて暗い夜道を進むのは大変じゃないか?」 しかし堀衛が、すかさず鋭い指摘を入れる。 夏鈴の感嘆が急停止した。 「言われてみればそうだな」と少女は落胆と侮蔑の視線を能都に注ぎ込む。 「い、いや、でも、それなら『暗い』って事だけに愚痴を言うと思うんですよ先生」 相変わらず刃物的な保健医に対し、能都も負けじと言い返す。 「夜中にマラソンをして鍛える人もいるし、夜間作業する作業員もいる。 そういう人間にとって、少しぐらい重い荷物を持って夜に移動する程度、屁でもないと思うんだ」 「麻太郎、レディが二人も前にいるんだよ?」 「おおっと」 「いや瑞樹、きっとこいつは私達の事を女性だなんて思ってないぞ?」 四人の間に、緊張が緩んだ様に笑いが漏れた。この辺りの話術は、さすが年長者と云うべきか。 まぁ少なくとも、と能都は空気を改めた。 「この二八文字しかない文章から推測するに、アウトドアを趣味とする人間じゃないな」 「うむ、そういう根拠があるならなら、私も筋肉立方体に同意見だ」 アウトドアを趣味とする夏鈴が大きく頷く。 それを見た堀衛が、今度はデコの広い少女に質問を向ける。 「では、次は田邑だな。これまでの事から、何か分かった事はある?」 「難しい問題だな」 鼻で溜息を吐《つ》きながら、大仰に腕を組んでから答えた。降参を意味する返答ではなく、思案をまとめているジェスチャーだった。 少し前に彼女が奈央を勧誘した様に、彼女の家は剣道道場を開いている。当然ながら、夏鈴も道場の門下生だ。 幼い頃から祖母と母に厳しく鍛えられ、剣とは『読み合い』であると教えられてきた。 場合によって、相手の実力が未知数なまま戦わなくてはならない。そんな時は、相手の心理を正確に読み取り、的確に動かなくては勝てないのだ。 攻撃も防御も、相手の性格を探り、裏の裏の裏まで読まなくては、凶刃の餌食となってしまう。 つまるところ推測《これ》は剣術と同じなのだ。 夏鈴は、そう解釈した。 「──この荷物を運ぶ者達は、商店街の近辺に住んでいるな。 堀衛先生が仰った通り、七キロという重さが想定外であったとしても、遠くから買い物をしに来る場合は、自転車か自動車を使うのが一般的だろうからな」 夏鈴達は学生なので運転免許を持っていないが、自転車ぐらいは持っている。買い物で荷物がかさばる事が予想されれば、当然ながら徒歩ではなく自転車を使う。 例え軽い荷物であったとしても、長い距離を徒歩で移動するのが辛い事を知っている。 「麻の字が推測した、重い物を使って運動しない人なら尚更だな。 仮に自転車や自動車を持っていなくとも、徒歩で買い物に行ける距離に拠点がある……という事になる」 「なるほどー。確かに夏鈴ちゃんの言う通りだねっ。ということは、徒歩で活動する範囲内の端っこが商店街付近だと仮定したら……そうだなぁ、半径にして五〇〇メートル程度に住んでる場所があるという事になるかな?」 夏鈴の指摘に、神社の跡取りが脳裏で地図を思い描き、四番目の推測を重ねていく。 能都も夏鈴も同じ様な地図を思い浮かべたらしい。奈央の言葉に従って、地図上の商店街を端に捉えつつ、赤い線で円形を描き込んでいく。その中には銀行や郵便局、駅もある。 とりあえず「生活する」だけなら、それほど苦労しなさそうではあった。 「ほほう」 空になった缶コーヒーが、堀衛の手によって賞賛のダンスを踊る。素直に三人が推察した内容に感心したらしい。 「揃いも揃って問題児のクセに、風紀委員が務まっているだけはあるな」 「……素直に生徒を褒めるという行為は教師の仕事だと思いますが」 「それに相応する金銭的報酬が確約されたら即座に実行してやる」 鈍器少女の殴打的な要求に、ナイフ眼鏡が世知辛《せちがら》い現実で切り返す。 微笑みは、そのままに議題を真面目な方向へと軌道修正させる。 「ではここから五番目の推測。 唯一、はっきりとした情報である『質量』から導き出されるのは、彼らの購入した物が、綿密に計算された計画的な行動に使用される……という事だ」 ■5 「綿密な計画?」 「ここで重要なのは『一〇キログラムぐらい』や『七、八キログラム』でもなく、荷物を運んでいた男性がはっきりと『七キログラム』と述べているところだ、瑞樹。 つまり彼らは園芸店に行って、こう店員に言ったはず」 ○○を七キログラムくれ、と。 そう言われて、奈央は思わず「ああ」と声を上げる。確かに中途半端な数字ではある。二八文字の言葉に居心地の悪さを覚えたのは「7」が孤独な数字だったからかもしれない。 しかしその数字が必然であったとすれば、七と言い切る事に納得できた。 「だが先生、先生は最初にこう言ってたではないか。七キログラムという重さを想定していなかった、と。これは矛盾していないか?」 「七キログラムも用意しなければならない事が予想外だったとしたら? だからこそ、その荷物を運ぶ男性が思わず『重過ぎる、ましてや~』などと漏らしたのだと推測できる」 「なるほど。つまり彼らは、事前に購入するものがどれだけ必要か計算していたって事になりますよね。 それが最初の予測より量が多くなった、と」 ううむ、と能都が虎の様に唸りを上げる。 「そうなると、何を買ったかが問題になってきますねー」 奈央の記憶によると、彼らは園芸店から出てきたらしい。園芸店で七キログラムも何を購入したというのだろう? 「普通に考えれば、鉢植えの花を買った──という事になるんだろうけどねー」 「しかし奈央、彼が抱えていたのは紙袋だったのだろう? 鉢植えを紙袋に入れて運んだりしないと思うぞ」 「そもそも園芸店で買い物をしたなら、一鉢二鉢とか一株二株って数えるだろ。 ってーと、キログラムで計る商品を買ったって事になるんじゃないか?」 三人が頭をつき合わせて考え込む。 それを見た堀衛が「じゃあ六番目の推測」と、次のステージへ促がした。 「これも唯一の手がかりから推測される事だ。 彼らは明かりのない時間帯で、それを使用するつもりでいる」 思考のスイッチを切り替えさせられた奈央が「後半のセリフの事ですね」と頷いた。 「明かりのない場所で重い荷物を運ぶとなると、大変そうですもんねぇ」 二番目の推測、能都が提示した時にも出てきた情報だ。足下や進行方向が見えないのは、当人にとって不安でしかない。 そんな状態で重い荷物を抱えていれば尚更であろう。想像上の行為ではあるが、そんな作業をしなければならない人物に奈央は同情する。 「では何故、明かりを用意しない?」 「え?」 その通りだ。暗いのであれば懐中電灯等を用意すればいい。 「つまり、だ。彼らがしようとしている事は『明かりを必要としない』作業であるか──もしくは『明かりを使用してはならない』類の作業である可能性が高い」 「つまり、夜に作業するのだな?」 ビンゴ、と保健医は二本目の缶コーヒーをポケットから取り出し、教え子に投げ渡した。 正解に対する景品のつもりらしい。 夜に作業するにもかかわらず、照明を用意しない作業。そんな堀衛と夏鈴の言葉を受け、能都は弾かれたように手を叩く。 「そうか、つまりそれは『泥棒』か」 「冴えてるな能都。多分それが正解だ」 口端を吊り上げて微笑み(それを微笑と称するのが許されるのなら。そうだ)三本目の缶コーヒーを正解者へ投げてよこす。 奈央は実際に泥棒という存在を見た事などないが、イメージ的に煌々と明かりを灯して活動する泥棒はいないように思える。 泥棒が目立つ事は自殺行為そのものだ。 「あれ、でもちょっと待って。じゃあ、その泥棒達は、園芸店で7キログラムも何を購入したのかな? ひとつの店で7キロも何かを買うと、逆に目立っちゃわない?」 「奈央の言う事も尤《もっと》もだが──逆に考えれば、そうまでして入手する必要があり、かつ多少目立ったとしても、泥棒と関連付けられ難い物、という事になるな」 さらに矛盾を指摘する奈央に対し、選択肢の幅を狭める指摘が返された。 むむっと純白の少年は言葉につまり、能都は保健室の天井を仰ぎながら考え込んだ。 「泥棒するのに園芸店で必要なものかぁ」 待てよ、と彼は視線を保健医へと戻す。 「そもそも、そいつらは何処に忍び込もうとしてるんだ?」 当然の疑問である。 しかし、二八文字の中に場所を示す情報は見当たらない。それに気が付いた奈央の首がますます傾き、瞳に「?」マークが浮かぶ。 「彼らが泥棒である可能性が高い。 スポーツマンの様に身体を鍛えてはいないから、あまり大きな物や重い物を盗もうとはしないだろう。 そんな彼らが、思わず愚痴ってしまいたくなる場所といえば?」 つまりそれは『車両などが使えない距離を移動する状況がある』という事に他ならない。 車を使いたくても使えない場所。照明器具を使うと目立ってしまう場所。 「銀行や民家、双葉学園……じゃないよなぁ、車を使える場所にあるし」 「となると、車両では入れない道を移動した先にある場所という事だな」 「う~ん、車が入れない場所かあ。……湿原とか密林とか岩山とか砂地とか獣道とか階段とか地雷原とか?」 「双葉島はどんなサバイバル地帯なんだよ」 そう口にして。能都の脳内に居候している『閃き』が、奈央の挙げた候補から、ひとつ選び出した。 「……階段」 以前、何処かでその単語を思い浮かべた様な気がした。つい最近、さっきも口に出していたはず。四角い頭の脳内で、脳がフル回転して球状になる。 「あ、双葉神宮か」 しばしの熟考の末、能都はその言葉を導き出した。その場所の名を耳にすると、奈央も夏鈴も息を呑む。 「確かに。双葉神宮には緩やかだが長い階段があり車では入れないな!」 「双葉神宮に参拝する人は多いから、賽銭もかなりの額になるよっ! それに、本殿には文化財も沢山あるっ! 泥棒が狙うとしたらソレだよ麻太郎っ!」 喉につかえていた餅が取れたような表情で能都が照れる。 「この双葉島で泥棒が注目する所といえば、銀行と各研究機関、双葉学園、神社仏閣辺りだろうからな」 食卓として使っている机に肘をつきながら、堀衛も彼の考察を認めた。 「おお、先生のお墨付き! 来た! ついに我が世の春が来た! 俺の時代なのか!?」 滅多に褒めない教師であるから、これには能都も舞い上がる。 「だが惜しいな、五〇点だ」 、しかし教師当人が、それを対空砲で無慈悲に撃ち落した。撃墜され、机に突っ伏す箱型少年。 「ええぇぇ ち、違うんですかぁ~」 てっきり双葉神宮で「正解」だと思っていた奈央は、叫び声を上げようとして失敗した。 妙に脱力して裏返った声になってしまう。 「落ち着け奈央。今ので『惜しい』という事は──先生、まさか」 「うん、双葉神宮ではないと思う。あそこは、アレでなかなか警備が厳しいからな。 何を『守護』しているのかまでは知らんが、まぁ今は関係がない。 私が泥棒なら、もう少し楽な場所を狙う」 自分専用の椅子に深く沈み込み、背もたれを軋ませる。左右の指を組み、生徒達を見渡した。 「彼らが狙うのは、十中八九──」 わずかに、言葉を溜めた。 「増糸神社に奉られている『宝刀』だ」 ■6 堀衛の言葉を受けて、奈央の記憶がスパークする。青白い電流にも似た思考が、点と点を線で結んだ。 「テレビの取材!」 「そうか!」 今度こそ叫び声をあげる事ができた奈央に、夏鈴も叫んで同調した。 泥棒に入るのだから、可能な限りリスクを減らすものだ。ならば、わざわざ厳重な警備がされている場所を狙って忍び込む事はないはずである。 人目がない場所で、セキュリティが大甘で、しかも盗む価値がありそうな場所といえば、確かに増糸神社しかない。 「取材を申し込み、わざわざ下見までしたにもかかわらず、それ以後は一切の連絡が取れなくなった取材スタッフ。 これは露骨に不自然だろう?」 オカルト番組の取材ではなく、窃盗する為に下見をしていたのだ。 奈央も親から話を聞いただけで実際に目にしたわけではないが、おそらく「それらしい」 装備をして来たに違いない。 増糸神社に行くためには、どうしても角度が急なあの階段を登らねばならぬ。明かりも灯さず、重い荷物を持って暗闇を移動するとなれば、愚痴のひとつも言いたくなろう。 「じゃあ──園芸店で買ったものって?」 「猫だ」 「え?」 顔を上げた能都の疑問に、奈央は呟きで応えた。 「神社の境内には、たくさんの猫がいる。 その猫達が、深夜の集会中にニャーニャー大合唱して、近所の人達を起こす騒ぎがあったって言ったじゃないか麻太郎!」 「あ、え、じゃあ、その騒ぎって」 能都が思い浮かべた事を、夏鈴が代弁する。 「過去に一度、奴等は宝刀を盗みに来たが、猫達に騒がれて退散したんだ」 単に騒いだわけではなかったのだ。 猫達は、大切な仲間である奈央達に、神社の危機を報せてくれていたのだ。 「園芸店で買った物が、泥棒するの必要だったとすれば、夜中の境内に集まっている猫をどこかに移動させる為の物なんだ!」 「なるほどなぁ。……神社の外にある場所にバラ撒くなりして、穏便に猫を排除できる物といえば」 双葉島は双葉区であり、立派な東京都内に含まれる首都の街だ。これが都心等であれば外での出来事に無関心な人間が多い為、リスクは少なくなる。しかし同じ都内でも、こうした島の中ではそうもいかない。 島で暮らしていると、田舎にも似た相互の絆が自然と形成されていくものだ。騒ぐ猫を不審がって様子を実に来る近所の人間がいないとも限らない。 となれば、猫たちが騒がない様にしてやるしかない。つまり。 「そうか! 奴らが園芸店で買ったのは、マタタビの葉か! それならキログラムで換算できる!」 「草葉でも七キロもあれば、かなりかさばる物だし、あの急な階段を暗闇の中で歩くのは確かに大変そうだ!」 「あわわわ。ボクの家に、どど泥棒なんて、た、大変だあっ!」 三〇文字にも満たない言葉が解きほぐされていく。その事実に、三人の顔が興奮で紅潮している。 しかし保健医は、ここで初めて苦笑いを浮かべた。 「細かい事なんだがな、私はマタタビじゃあないと思んだ」 「え、どうしてですか? 猫にはマタタビって昔から決まってるじゃないですか?」 「ここまで計画を立てるんだから、逆に大量のマタタビを買うのは不自然だろ。 神社から一時的に猫達がいなくなり、そのせいで誰にも気付かれずに泥棒が入ったとしたら──当然、マタタビを買い込んだ奴らが疑われるだろう?」 「あー、そうか。そう言われるとそうだなあ」 奈央が投げた疑問に、的確な答が打ち返し、それを氷解させる。 「じゃあ、なんなんです?」 「おそらく、イヌハッカだろう」 イヌハッカ(英名『キャットニップ』)は、シソ科ネペタ属の多年草で、ハーブの一種である。肉料理の香り付けに用いたり、サラダに入れたり、ハーブティーにしたりする。 英語名である『キャットニップ』は「猫が噛む草」という意味であり、その名の通り、猫はこの草を好む。 これはこの草の精油に「ネペタラクトン」という猫を興奮させる物質が含まれている為である。 「おおかた『パーティーの料理に使うんだ』とでも誤魔化したんだろうな」 鍋パーティーではなくて、もっと立派な奴だ……と保健医はスープだけになった鍋を指差す。 「この辺では見ない顔でも、引越パーティーをやるとか何とか適当な事を世間話レベルで言い含めておば、それほど警戒されんだろ? そもそもハーブの一種なんだから、犯罪と結び付けて考える人のほうが稀だろう」 そこまで流暢に喋っていた保健医の口が、ピタリと止まる。 「どうしたんですか?」 「なぁ瑞樹。ちょっと聞くんだが」 真剣な表情で声を潜めるものだから、つられて瑞樹の顔も神妙なものになる。 「……その宝刀だが、こんな手間隙(てまひま)まで掛けて盗む価値のあるもんなのか?」 「泥棒に代わって何をする気ですかっ!?」 教師の瞳の奥に、不穏な濁りを感じ取った神社の息子が思わず大声を出す。 「ああいや? 勘違いするなよ瑞樹? 単純にカネ、いや金銭的な付加価値が如何ほどのものか気になるだけでな?」 「言い直す必要あったんですか、今の」 白無垢の巫女ならぬ白ゴスロリの少年は、深く溜息を吐いて「父さんからの聞きかじりですが」と前置きをする。 「稲荷というのは字の如く、古来より稲作と非常に深い関わりがあるそうなんです」 雷の事を『稲妻』と書くのは、雷光が激しくなる季節と稲が実る時期が重なるので、雷が豊作をもたらすのだと信じられた為だ。 「で、この雷──稲妻が『雲の中を走る蛇』にも見える事から、稲妻と稲作と蛇とを関連付け、神格化したのが稲荷神の起源とする説もあるそうなんですよ」 「ほほう」 福岡地方にある稲荷神社の中には、蛇を奉る所もある。 これは、その地方を統治していた豪族が豊作を祝う餅で射的をしようとしたところ、餅が蛇に変化した。するとその蛇は村に凶作の呪いを掛けたので、蛇(神)を鎮める為に神社を建てて奉った──という説話に基づいたものである。 「ウチに奉られてるのは、千年ほど前、この稲荷神の原型に当たる神様に奉納した刀らしくてですね。 無銘なんですが、なんでも稲荷神……蛇神様の御力が授けられてるんだとか」 その刃を田へ振るわば、稲妻と共に稲は豊かに実り。 その刃を邪へ振るわば、雷光と共に悪しきは天罰を受ける。 奈央は父に教えられた一節を暗証してみせる。本当かどうかは知りませんけどね、と話を結ぶ 「お前、それ本物なら国宝級じゃないのか」 驚くよりも、呆れた口調で堀衛が言う。 神力が宿っているかどうかは別にして、千年前というのが本当であれば、その歴史的な価値は相当なものだ。 「元は双葉神宮の物らしいですし、お姉ちゃんが欲しがってたから、たぶん本物ですよ」 なるほど、と堀衛は納得する。 そういう逸話がある刀ならば、裏ルートでかなり高く売れるはずだ。それが、小さくて小汚い神社に保管されているなどと知ったら、泥棒をしようと考える輩も出てくるだろう。 「とにかく、能都。この推測が考え過ぎならいいんだが、念のために警察に連絡を入れておけ。私の名前を出せば話は通るはずだ。 神社の方には瑞樹が連絡しとけ。いくらなんでも、親御さんも起きてるだろ」 言いながら時計を見る。夜の八時を少し過ぎた頃だ。能都は既にモバイル学生証で警察に連絡を取っている。 奈央も慌てた様子で、家に連絡を取ろうと学生証と格闘していた。 「杞憂に終わればいいのだが」 そんな幼馴染達の様子を眺めながら、夏鈴がポツリと漏らす。ポケットから煙草を取り出し、一服していた保健医はカセットコンロの火を点火した。 「風紀委員が学園外で風紀粛正するわけにもイカンだろ。後は警察に任せておけ」 泥棒も能力者やラルヴァの類じゃないだろうしな、と彼女はスープをかき混ぜていく。 「能力者の泥棒ならば、もう少しスマートな方法をとるのでしょうが…… ところで先生、何故に火を?」 クツクツと煮えだしたスープを眺めながら、保健医の目が光った。 「馬鹿たれ、決まってるだろうが。 ──おじやの用意だよ」 鍋ジェネラル、堂々の復活であった。 ■7 翌日。 朝のHRを終え、能都は保健室を訪れた。 「先生、聞きましたか」 部屋に入るなり、彼は保健医に呼びかける。 「五月蝿いな。聞いてるよ。泥棒が捕まったんだろう? 比良乃《ひらの》刑事から連絡があったよ」 不機嫌そうに堀衛が睨みつけてくる。 スチール製の灰皿には、何十本もの吸殻が山積みになっていた 「あ、あれ? なんか不機嫌ですね……?」 「同じセリフを朝から聴かされてな。お前で三人目だよ」 よく見れば、ベッドに奈央と夏鈴が腰掛けている。どうりで教室を覗いても姿が見えなかったわけである。 「あ、麻太郎ー、おはよー」 「朝から随分と一八禁な顔面だな」 二人が挨拶をしてきたので、能都は片方に優しく、もう片方には歯を剥き出しにして威嚇した。 「そうそう、麻太郎。昨日初めて警察の捕物を見ちゃったよ! 本当に泥棒が来たんだよ、深夜の二時過ぎに!」 帰宅後、どうやら寝ないで待機していたらしい。実に眠そうな目をしている。いつもなら保健室のベッドで爆睡するところだが、どうやら能都に昨夜の事を話したくて待っていた様だ。 「警察の人達は半信半疑だったけど、比良乃さんって刑事さんが堀衛先生の言う事を信用してくれてね。物陰とかに隠れて見張っててもらってたら……これがドン☆ピシャリ!」 何故かここでVサイン。 「堀衛先生の推理通り、何人かの男の人達がやって来て、神社にいた猫に葉っぱをバラ撒いて大人しくさせたんだ」 そこまでで終わっていれば、ただの悪戯で済んだのだろうが……奈央の言葉を受けて、辟易した表情で堀衛が言葉をつなぐ。 「さすがに神社の鍵を壊したところで、現行犯ってわけだ」 「比良乃刑事が言うには、連中は捕まったというのに、悔しがるよりも先に不思議そうな顔してたらしい」 「そりゃそうだろうなぁ」 続いて夏鈴がリレーで説明をつなぐ。 当然の結末に、能都も大きく頷いた。 「あぁっ、もうっ! 先生も夏鈴ちゃんも、なんで先に言っちゃうんですか!」 眠そうな目を必死に見開いて、女装少年が激しく抗議する。 「黙れ。お前から寸分違わぬ説明を、三回も聞くのは御免なんだよ!」 事務机を「ドン!」と叩いて、それ以上の抗議活動を弾圧した。しょぼくれる奈央の頭を夏鈴が幸せそうに撫でて慰める。 「まぁ犯人の気持ちは分からんでもないがな」 そうして警察が先回りしていたのか、理解できなかっただろう。聞けば、彼らが双葉島で拠点にしていたのは、商店街の近くにある駅前の安ホテルであった。 能都や夏鈴が推測した範囲内に、そのホテルは存在していたのである。 「神社に奉納してある宝刀を盗んで、海外に売り飛ばそうとしてたらしい。比良乃が言うには、最近では、本土の方でも同様の犯罪が増えてるそうだから、もしかしたら同一犯かもしれんとさ」 煙草がなくなったのだろう、缶コーヒーをポケットから取り出してガブ飲みする。 「やけに手口が手馴れてるらしいからねー。 けしからんって、父さんも母さんもカンカンだったよ」 復活した奈央は腕を組み、何度も小さく頷いてみせる。 「ともあれ被害が未遂でよかったな、奈央。 もしも盗まれてたら、七日さんが残念がるろうし」 「お姉ちゃんなら──」 犯人を探し出して肉団子にすると思うよ。 奈央は姉の人となりを、そう表現した。 残念がるどころの話ではなかった、むしろその性格の方が残念だと言わざるを得ない。 「しかし隻眼大将たちには感謝しないとな」 夏鈴は、ふてぶてしい顔の猫を思い出しながら、そんな事を口にする。 「そうだねー」 隻眼大将をはじめとする猫達が騒いでくれたおかげで、最初の犯行を防げたのだ。それが結果的にイヌハッカを買う事になり、奈央が例の二八文字を耳にする結果となった。 因果とは不思議なものである。 「なにか、お礼をしてあげないとねー」 「うむ、久し振りに私も遊んでやるか」 「委員長が知ったら飛んでくるだろうなあ」 三人は重い思いに口を開く。 「猫相手に律儀な事だな。感謝するなら私にもしておけよ。金銭的な感謝を」 予鈴が鳴る。 モゾモゾと奈央がベッドに潜り込む。 「奈央、一限目からサボる気で満々か」 「うんー。だって寝てないんだもんー」 能都の諌言に、奈央はうつぶせになりながら眠そうな声で弁解する。こうなると、もうベッドから動かない。 「眠いなら仕方がないな」 「うむ、仕方がない」 「お前ら瑞樹を甘やかし過ぎだ。ロクな大人に育たんぞ」 引きずってでも連れて行け、と教師は注意するが、字面ほどの口調ではない。 完全に諦めているので、お決まりの文句の様なものだ。 「どうせなら寝てる間に、猫への礼でも考えたらどうだ」 奈央の方には目もくれず、書類にボールペンを走らせる保健医は、そんな提案をしてみせる。うーんと唸った奈央は、半分まどろみの中で、悪戯っぽく微笑む。 「ネコ缶、七キログラムは重過ぎるかなー?」 考察終了 トップに戻る 作品保管庫に戻る
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ある中華料理店店員シリーズ シリーズ概要 主人公である中華料理店のバイト員「拍手敬(かしわで たかし)」が 風紀委員見習いの通称:外道巫女の「神楽二礼(かぐら にれい)」に 無理矢理事件に巻き込まれて酷い目にあう作品です シリーズ作品 【ある中華料理店店員の悲劇 前編】 【ある中華料理店店員の悲劇 中編】 【ある中華料理店店員の悲劇 後編】 【ある中華料理店店員の七夕の日】 【ある中華料理店店員の夏の悲劇】 【ある中華料理店店員の南瓜祭】 【祭りの後の反省会、一日目夜の事】 【ある中華料理店店員の聖夜】 【ある中華料理店店員の選択】 その1 【ある中華料理店店員の選択】 その2 【ある中華料理店店員の選択】 その3 【ある中華料理店店員の選択】 その4A 【ある中華料理店店員の選択】 その4B 【ラルの新連載―双葉学園・最強料理王編3】 タグ:チャーハン 主な登場人物 拍手 敬 神楽 二礼 自作時系列表(NPCSS、異能本編除く)ガナあきページから丸パk……お借りしました ○昨年度4月 拍手入学して早々に、大車輪にバイトに入る 以降、ずっとバイト三昧で実家に帰らず ○今年度 4月上旬 拍手と神楽が出会う 直後、神楽が大車輪に通うようになり以降常連に 5月 6月 「~悲劇」(会長紹介SSをシェア) 大車輪にトラックが突っ込む、数日後には改装完了して店再開 7月 「~~七夕の日」 8月 「~~夏の悲劇」 木山(ガナリオン)と知り合う 9月 10月 「~~南瓜祭」 11月 12月 「~~聖夜」 「~~選択」 拍手、自分の能力が何かを知る Aルートは作者が元々考えていた話 +その後 #拍手は光に 、神楽は年が明けて早々に双葉学園を辞め実家に Bルートが双葉学園としての正史 拍手は年末に目を覚まし、その後また緩々した生活へと戻ります 以前との変化は、意味のある戦いからは逃げなくなったこと 1月 2月 3月 作者コメント 初めてSS(?)を書いたので文法とか書き方が破綻してますが「こいつらバカだ」と笑っていただければ幸いです 関連作品 まだありません 戻る
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僕とロボコの用語集だ。週刊少年ジャンプ掲載。 本作のキャラクターについては僕とロボコキャラクターズへ 用語集 OM オーダーメイドロボのこと。ロメイド服姿が基本だけどロボコみたいなずんぐりむっくりなタイプもある。 他には那須みたいな医療従事用や能美兄弟が出したようなスポーツタイプもある。 スポーツタイプは運動性能が通常のOMよりおよそ5倍。 通常OMは悪用防止のため生物へ危害を加える命令を出すと強制停止してしまうようプログラムされているんだ。 ところがロボコだけは攻撃可能。またOMであっても那須みたいに故障して戦闘態勢することもある。 モツオにモツオダディが勧める単眼タイプもある。見かけは約ネバに出てきた鬼。 ロボコだけかもしれないが高エネルギーを使うと痩せて美少女風になり見かけが弱体化する。 ロボコクイズ ヒザからロボコクイズと書かれたノボリ旗が出てくる。痩せるとできない。 新しい概念 家に帰ったボンドを出迎えたロボコが発した概念。 ゴハンにする?おフロにする?それとも あ・た・ら・し・い・概念?新しい概念。 どう対処したらいいか困惑するボンド。 人が触れると世界の均衡が崩壊する全く新しい概念だゾ。 しまっとけそんなものとボンドは命令しロボコは処分しようと力でねじ畳む。 ロボコヒザ枕 イヤなことを忘れたいときに使う。毎秒10万回の超振動で過去の記憶を全て消去しシナプスを破壊。 メヒョゾーマ ロボコがメイコに放った一言。女狐女豹メヒョゾーマ。メラゾーマみたいに言うな。 バミューダ小学校 ボンドが通う学校。防災強化週間があり各家庭のOMが迎えに来るので生徒たちは大いに盛り上がった。 平家にロボコが来るまでボンドはこれが嫌いだった。皆がOMを自慢しあうなか1人で帰るのは寂しかったのだ。 ロボコ占い ロボコクイズと同じく膝から旗が出て来る。 ロボコ占いとはオシャレと占いを融合させた全く新しい占いだゾ。 ファミチキを出すボタンと反対側の腕にあるロボコボタンを押すとロボコが吐き気を催し運勢が書かれたしっとりな紙が出て来る。 よさげ、よさく。 形態変化(トランスフォーム) ロボコが変形するけど時間かかる。足を外すとジェットブースターになる。 もってくれよマキアージュドラマティックパウダリーUV! モデルPonanza ロボコが形体変化した姿。ただ寝転がっただけだが円によると電王戦で佐藤天彦名人と熱戦を繰り広げた将棋ソフトPonanzaと同じ形。 足で指そうとするが無理だったので普通に指すことに。 ロボコ砲 打つと山をもくり貫く破壊力を誇るが、生物には無害である一方優しくなるぞ。しかし代償としてつけまつ毛が飛ぶ。 ファミチキ ファミリーマート(ファミマ)で売っている おやつ的なもの。ロボコが出すファミチキは7話にてファミマで購入していることが判明。 バミューダ霊園 ボンドが肝試しに行ったぞ。霊界と繋がっているらしい。モツオとガチゴリラはメイコを連れゴーストバスター衣装で吸引力強い掃除機を装備。 しかしメイコが霊のプラズマで誤作動を起こしのっぺらぼうになったメイコにか2人は霊界へ連れていかれゴーストバスターするのだった。 モツオんち(金尾邸) 貴族の家みたいな屋敷。長机のある飯食い場や和室もある。 押忍‼︎クソ男飯‼︎ ロボコがつくった。皿に盛ったライスのほか、丸ごと卵とファンタグレープとトマトケチャップを容器ごと突っ込んだもの。 押忍‼︎クソ男飯"改‼︎" ガチゴリラにロボコの手料理を食べてみたいと言われボンドにロボコはメイコほどつくれないと聞いて対抗意識でロボコがつくった飯。従来の押忍‼︎クソ男飯‼︎はファンタグレープのみと言われていたが、あえてオレンジにした意欲作。 だがロボコにはイマイチで もっとクソさじゃないとと不満だった。 踊れ‼︎クッキングダンシングキッチング メチャクチャ手際がいい その洗練された身のこなしはまるで踊っているかのようだが実際に踊っていた。そしてできたのが皿とスプーンを放り出したものでボンドから何にもできてねえとツッコミられる一品。 ドチャクソバグりまんま ロボコが試行錯誤してできたカレー。食べればズバーンと服がはだける。モヤモヤも溶け出して帰りみち鼻歌。 ドミオピッツア ドミ夫がオーナー兼店長するピッツア店。 出来立てから30分以内で配達することにプライドがある。 アルバイトの次月シフトが希望できる。 看板のロゴはドラえもんタイトルをオマージュ。 バミューダ町 ボンドたちが暮らす とある都市の一覧地域だ。主な教育機関はバミューダ小学校だ。 バミュ4 バミューダ町にいるイケメン金持ち小学生グループ。 妙々寺トゥカサ、ルイ花技、西キャド、モツオで構成されている。 しかしバラバラに活動しているので普段4人組なわけない。 モツオは親の都合で小卒すればバミューダ町を去るためモツオの代わりが入るかバミュ4はバミュ3になる。 常にロボコをめぐり丁重に取り合いし商店街に集まる。小学生女がバタバタ倒れるのでタレントが来たかと思ったボンドは菅田かと思われていた。 ロボコ型自転車・ツール・ド・ロボコ ボンドの誕生日にロボコがプレゼントしたマウンテンバイク仕様の自転車。 バイト掛け持ちして貯まった資金で自転車屋・田田サイクルにつくってもらった。基準となる身長はカスピカイアザラシだ。 普通の自転車をカスタムしたオーダーメイド自転車で、サドル中央に顔や腕が付いていて目がライトになっていてメチャクチャ光るぞ! 腕も飛ぶ、勝手に喋る。「まだまだこんなもんじゃないわよ!」とな!泥除けカバーはロボコのスカートをモチーフにしているぞ! 時速120キロとメチャクチャ早く走ることができおまわりさんに止められる。 ロボコプター ロボコが飛べます。 我知動物病院 ガチゴリラの実家だ。OMの那須が受付するよ。 集英社 少年ジャンプなどを発行する企業。この世界ではスーパーブラック企業体制だ。 お仕置きと称して強制労働させる地下施設がある。 地下に強制労働場がある、集英社の電力は、強制労働の労力。 少年ジャンプ編集部 漫画に携わるものなら誰もが憧れる場所。たぶん集英社の部署だ。 入り口にはNARUTOやルフィが鎮座しちょるんよ。 未来の少年ジャンプ編集部は今以上にブラック。 編集長の両脇で人頭サイズのドラゴンボールを2個抱えていたり裸体でデスクワークしたり犬神家やったり背中に三代鬼徹刺さることもある過労死があったりマガジンを持っていたり読んでいただけで半殺しにされるジャンプ愛溢れる職場なんだな。過労死が発生した場合は死体を先週号と一緒燃やすのが恒例だ。一応みな世界一の漫画を創ろうという熱意がある集団だ。 盗作がバレると地下施設で強制労働させられるらしい。 なお、食いしん坊バトルクラブの敗者監禁場所として使用されることもある。 試しの門 ジャンプ編集部の入り口にある扉だ。 ジャンプ編集部ではネタバレを防ぐ為、簡単に入れないようなっちょるん! 入ったら最期、生きては戻れないとの理由から黄泉への扉とも言われているよ。 門には鍵はかかっていない。それでも押してビクともしないのであれば単純に力がたらんだけか。 このものを開けられないような輩はジャンプ編集部に入る資格なしということらしいが、2年目の4年目は開けられず入る資格がないと開き直り結局ロボコがいなかったら入れなかったんじゃ。 試しの門を2まで! この扉の横にある小さい扉は侵入者用の扉で、そこから入ると完璧に訓練された編集部員(脅威のメガネ率)が襲ってくる。 四稿 ジャンプ編集部に原稿ごとく君臨する編集長を含む副編以上の4人編集者さ。 連載するためには彼らを納得させなければならない。 避けては通れない相手だよ! メイク・ザ・ジャンプ 編集長の能力だ。触れたものをジャンプにしてしまう少年ジャンプの編集長に代々伝わる必殺技さ! 編能力 班長以上がもつ能力だ。 編集エネルギーを自在に操る力、まあ言ってみれば念能力と大体一緒だよ。 僕の緋色のマカダミア ロボコが描いた漫画。絵は劇画。十三階段ベムもビックラ! ケツの穴グッと マカダミアあ マカダミア?がんばれってかんじの 握りつぶしてマカダミアアアアア・・・ 緋色の丸く握り潰されたマカダニアナッツ NUTS‼︎ アンダッテアンダッテ ロボコが描いた漫画。絵は劇画。マンディだっての否定者。だって言うな‼︎と言いながら最高だ‼︎と言うぜ。 ハイあんドーナツ あんだって? だからあんドーナツ あんだって? ・・・ UN DONUT -あんドーナツ- ブラック (苦労婆)クロウバア ロボコの漫画。黒い老婆が魔法瓶を探すストーリー。主役の老婆は自称をアタスと言うぜ。 ルリの漫画がGIGAで掲載されたのを機に披露したあロボコの漫画。 これを読んだボンドはクソ漫画と叩きつけるが、同じく読んだルリはライバル出現を感じた。 ルリに独特の世界観と言わしめた。 じゅじゅじゅパイセン じゅじゅじゅパイセンというキャラクターが主役。パイセンはビックリすると『じゅじゅじゅ』と言うが、実際にビックリしても言うことは一度さえない。 僕とロボコ この漫画のタイトルおよびロボコが描いた完全オリジナル漫画。 内容は相変わらずの絵にモデルとなったボンドがロボコへの求愛度より高し! 応募して最終候補まであと一歩だった。編集部講評では、『全体的につたないが、2名の仲の良さが伝わり好印象。この内容で48Pはすごい』などと評価されたんだ。 バミューダツインテールズ いわゆるママさんバレーチーム、平かかあも参加している。 (T・T)みたいな顔がロゴ。体育館の使用権をかけた試合当時迫っているのに、チームメイトが風邪やら冠婚葬祭やらで大量欠員が出ていて相手チームの不戦勝に終わるかと思われた。そこでロボコ参戦を皮切りに知り合いをかき集めた。 バミューダビューティーズとは1つのチームだった。 その結果半分以上が子供とOMになってしまった。まあどうにか勝ったから結果オーライだ。 バミューダ・ビューティーズ バミューダツインテールズから見ても対戦相手だ。能美シマイが代表を務める。 バミューダツインテールズとは1つだったが、何らか理由で分離独立。まあともあれ敗退すると相手チームの平かかあが手を差し伸べ再びバミューダツインテールズに入りしたのを気にバミューダビューティーズは解散した。 ツイッター ご存知つぶやくアレである。バミューダ小学校で円のフォロワーが1万2千人と話題。他人を支持するフォロワーはロボコにすると戦闘力だ。ボンドは聞いた当初1万2千人は今年の雄英高校の受験者数だと思ったらしい。いやみそうに話しかけるモツオとガチゴリラ、ボンドがツイッターに興味なさを示すとオロオロし始めボンドには早すぎたとガチゴリラに言われる始末。モツオと純金ジェンガの続きをするのだった。 ツンとスルーしたボンドだったが帰宅早々睫毛いじりのロボコにツイッターを教わろうとする。 ロボコはムチャクチャツイッターしていてロボコからツイッター取ったらただの膝といっても過言でないらしい。早速ロボコはボンドのスマフォを借りボンドのアカウントを作ってくれたがメインページはロボコの主張が強い仕様になった。ロボコに勧められるがままに円のツイートも見ることとしたボンド。円のアカウントネームは円ちゅわん。まず見たのは634件のツイートがあった。内容はファッションがほとんど。なかには自身が勝負師になった顔を知らないひととしてツイートしたものもあった。ガチゴリラのトプ画は家族写真、ツイートは深い。フォロワーが4しかなく少ない。その理由はフォローしたアカウントが環境省やらJICAやら国連WFPやらという意識高過ぎて誰もついていけないからだ。モツオはトプ画がボンドとガチゴリラが写ったトリプル写真。人脈を活かしジャスティンビーバーやらレディーガガやら有名なやつらとツーショットをツイート。そのせいかな、フォロワーは53万だ。ロボコのアカウントは平ロボコ名義で6666件のツイートがあり大量の#がある。フォロワーは1,19件、ツイートは五条先生感想。ニキビができた今日のヒザ!肘、ツイートに対するは全てロボコの副アカ。最もバズったのは押忍‼︎クソ男飯‼︎と風呂上がりボンドのツーショット。さすがのボンドも消すよう指示して泣く泣くツイートを削除するロボコ。さいごは読者にロボコをフォロワーしてあげてねと締めくくる。 手塚賞・赤塚賞受賞記念パーティ 帝国ホテルで行われたイベント。 サニー号型ジェット機 尾田栄一郎の愛車ならぬマイプレーン。 手塚賞・赤塚賞受賞記念館パーティに合わせ、飛行機にとって狭い帝国ホテルの屋上に着陸できる。 食いしん坊バトルクラブ バミューダ町で最も食いしん坊を決める大会 優勝者にはバミューダ町の 中華店 新気功砲の1年食い放題券が送られる。 今回は中華トライアスロン中華マン50コチャーハン50杯ラーメン50杯を最も早く食べた人が優勝。 優勝者にはバミューダ商店街中華店新気功砲の1年無料券が贈呈。敗者は364泊365日の集英社地下労働施設体験ツアーにご招待。今なら焼印が無料らしい。 新気功砲は中村チ。しかも優勝商品2度言ってる。 今回は小学校5年生なボンド(11)も今大会最小にして最年少140センチ35キログラム 本当に大丈夫か?と言われながらテクテク出場したが、観客からは、ちっせー!とか頑張れー!とか励ましの歓声がこだまする。もともとボンドは たまたまチラシ見かけてちょっと出てみただけ、町の小さな大会と思っていたらしく、みんなに内緒で参加して優勝したらかっこいいと思って応募したら1人で来て後悔したらしい。こんなガチのやつだったとかいきなり決勝とかな。棄権は敗者と見なされるらしくボンドは審判に棄権を申し出ると敗者席で待つよう結局棄引くに引けなくなって棄権を撤回したよ。審判はバレー大会のときに取り仕切った審判。ボンドもできるだけ食べ進めるも限界がきて乱入したロボコと交代、これは審判に認められ続行。しかしラーメンに差し掛かるとロボコには すするという動作がないらしく食うスピード停滞、器ごと飲む方法に切り替え優勝した。 お食事処 とらや 慶応元年にあった茶屋。名物は草だんご。おマドという茶屋女が接待する。 バミューダ ゴリラーズ 少年野球チーム。我知ゴリラはエース4番。 ドレーク ドッグス 強豪少年野球チーム。 準決勝でジブラルタル ゼブラックスに敗れた。 ジブラルタル ゼブラックス もともと万年負けの弱小少年野球チームだったが、メジャー級の怪物と噂されるロボコの加入でパワーが増し、準決勝でドレーク ドッグスに打ち勝ったんだ。 ロボコはエース4番。OMの使用は大会で認められている。キッカケはネギ4本を千本買うとこだったロボコが野球少年らに球を投げたからよ。 球を受けた少年は幸い突き指で済んだが吐血、だけどチームは弱小 9人ギリギリ、人数合わせという形でロボコはゼブラックスに入った。パワー、根元、おまけに木製バットで軟式ボールを飛ばすとなると理論上ロボコはバットに当てるだけでホームランにできることになる。 ロボコボール ロボコの投法。一見すると投げた球が2つに分かれるように見える球。 しかし実際はボールと一生に右手を飛ばして途中から二手にわかれる技。 ガチゴリラはこれを苦戦したが、2つにわかれてもミットに収まるときは元の軌道に戻ることを見破った。 純喫茶 純・受話 茶屋純のパパ上なマスターが切り盛りする店。 一時期はオサレなカフェに客を取られし。 バミューダ病院 ボンドが記憶喪失で入院くらいした医療機関よ。総合病院だろうな。 幸せ棚〜 ロボコの作品。棚。「ヒエー」や「ヤメテー」と鳴くよ。 もともと漫画買い過ぎ棚が埋まった機にインスピレーション、翌日に披露。 犬でしかも首輪付いているんだ、幸せ棚〜は世界初の本棚になるペットだ。 散歩もできるし好きな時に漫画も読めるん顔コワいけど確かにちょっと便利だろう。 尻尾を吹くと、「ぎゃー」「たすけてー」と鳴く。 実はこの尻尾、ボンドのピアニカから拝借したもの。 顔は本棚として生まれてしまった絶望を表していて、人としての性を受けた幸せを噛み締めてもらうコンセプトだ。 「滅」と言いながらもつと「ヤメテー」というん。 あるいは裏切りと言う名の椅子 幸せ棚〜と同じくスゴイ顔。 どのへんが裏切りかというと、一見ただの椅子だが、一定時間座ると背もたれが倒れてテーブルになるところ。 よし坊 見かけはyogibo(ヨギボー)という人をダメにするソファだが、顔付きよし坊。人のためになりたいソファ。座ると「グエ」と放ち、白旗を持った手が出て「まいった」と言う。所詮ソファーですから座られるか 人型照明 スイッチ(頭部)を入れると関節が光ります。 今流行りの関節照明。 必殺‼︎ヴァン・ホーテン・ミルク・アパカー 制作期間1ヶ月に及ぶミルク藤沢とロボコの共作。 必殺技を形にすることで生と死を表現したミルク藤沢20年人生の最高傑作だ。 頭が手だ。これでも本棚だ。 ドラコンボール 主人公のソンゴ君がゴルフのドラコンで無したボールを探す物語ですう。 ドラコンとは、ドライビングコンテストの略。 天空の城のラピュオ 天空の城ラピュタのパロディ。 KISS!!クソ恋始めました!! ロボコオリジナルのラブコメクソ漫画。 超ノ助先パイ(15)と魔離孤(14)はクソ孤が加速するらしい。 宇和島吉田町ブラッドオレンジ みかん箱 君の雑炊が食べたい 映画だ。もちろん君の膵臓が食べたいのパロディだ。 推し鋸 押してダメなら引いてみろ‼︎ 雲母キララ先生のヒット作。 本来引いて使うノコギリを押して使うから全然切れない少年が生まれ変わって秋田小町を作る次期看板とも名高い青春ラブミステリーらしいよ。 その設定で次期看板って逆にスゴイ米。 天使の小窓(ゲート) ロボコが異世界などへ行く際使用。初登場は人形の世界に迷いこんだアカネを連れ戻すとき使う。 少女妄想(ファンシー)がギリギリだったんだけどなんとか小指の糸(ジョイント)できた。 人形の世界(イッツ・ア・スモール・ワールド) アカネが引き込まれた異世界だ。 アカネと人形のエンカウントがトリガーになって時のささくれが発生したようなの、人形たちはアカネをホストにしてトゥルーマンになるつもりだ。ダークファンシーが溜まるまでに人形を止めなきゃ! ようは人形がアカネの体を乗っ取ろうとしているんだぜ。 ベタ踏み坂47 鳥島ミユウことミユミユが所属するアイドルグループ。 たぶん乃木坂のパロディら! 本作のキャラクターについては僕とロボコキャラクターズへ
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ラノで読む 1 走る。 走る。 双葉学園島の郊外、山の中を少年はひたすらに走る。 年のころは十歳程度。野球帽を被り、ジャンバーに半ズボンといった、少年らしいいでたちである。 息を荒げて、時折獣のように四つんばいになりながら、ひたすらに走る。 いや、逃げる。 「はっ、はっ、は……!」 後ろを振り返る。 追っ手の姿は無い。 ようやく撒いた、と安堵し、少年は木に背中を預け、ため息をつく。 そして手に持っていたビニル袋を開き―― 木が爆ぜる。 周囲の枝が次々と火花を散らして折れ、砕ける。 その衝撃で少年は袋を落とす。 その袋の中から零れ落ちるのは、双葉学園の中でも一、二を争うと言われる超高級。 一日に十個限定生産、しかも流通する購買はランダム。 幻のパンと呼ばれる、「黄金の焼そばホットドッグ」である。 他にも、焼きたてカナダ産メープルシロップ入りゴールドマスクメロン果汁混ぜ込み黄金のメロンパン、 遠赤外線石窯焼きたて最高級黄金ピザパン、最高級の具材を集めた究極黄金カレーパン等があるという。 それらを作り、購買に卸しているパン屋の名を、疾駆する黄金のパン屋(ゴールデンダッシュベーカリー)。 そのパン屋の場所は誰も知らず、しかし確かに実在する。 双葉学園の都市伝説のひとつである。 噂によると、それは大量の猫(さらには醒徒会長の白虎も混じっているとか)が引く屋台であり、法定速度ブッ千切りで国道を走り抜け、しつこい客には追尾型ミサイルパンをお見舞いするという。 もしかしてラルヴァなんじゃないかともっぱらな噂だ。 閑話休題。 「そこまでだ子犬ちゃん」 声が響く。 藪をかき分けて現れたのは――純白の装甲に身を包んだ騎士。 もう一度光弾が撃たれ、それは少年が背もたれている木を中腹からヘシ折り薙ぎ倒す。 その銃撃の衝撃波で、帽子が落ちる。 その頭からは、獣の耳が生えていた。 つまりは――人間ではない。 「共食いは感心しないな。それはホットドッグだ、子犬ちゃんが食べるには全く持ってよろしくない」 「己(オレ)は犬じゃない! 狼だ!」 「どうでもいい。それはこの俺に食べられる為だけにこの世に生を受けたと言っても過言ではないものだ。 それをネコババ……いや犬だからイヌババか? とにかくひったくるとは感心しないな子犬ちゃん。 さあ、おしりペンペンの時間だ」 そう言って軽やかに踊るようなフットワークで、上段から指を刺す。 そしてジャンプ。空中で捻りを加えた回転をし、少年の前に降り立つ。 だがそれを見計らったように、地に立つ直前に―― 「!」 小さな雷の玉が飛来し、火花を散らす。 それを空中で受け、体勢を崩す。だがそれでも華麗に受身を取り、すぐに立ち上がる。 「やれやれ、教育的指導の邪魔をするとは無粋だな。 コソ泥仲間か? それとも俺と同じで子犬ちゃんにオイタをされたクチか?」 その言葉に応じて表れたのは―― 「どちらでもない」 黄金だった。 黄金の鎧に身を包んだそれは、純白に向き合う。 「そいつの友達の友達だよ」 「なるほど。じゃあお前が代わりにおしりペンペンされるか?」 「それで許してもらえるならそれでもいいが……」 『いいワケねぇだろが!』 別の声が割り込む。だがその声を発したのは紛れもなく、その黄金だった。 いや――黄金の鎧が喋っている。 『王は軽々しく頭をさげるモンじゃねぇ。ましてやお尻ペンペンだ? ふざけんじゃねぇぞこの真っ白ヤロウ!』 「よく判らんが流石はコソ泥のお仲間。反省する頭も無い、か。下品なのはその悪趣味な鎧だけじゃないようだな、金ぴか」 『んだとコノヤロウ! てめぇこそいちいち馬鹿にする態度がうぜぇんだよ!』 「馬鹿にした覚えなどない。俺が超~偉いだけだ」 『むぎー! ふざけてんじゃねぇよこのノータリンのチンドン屋があ!!』 叫ぶ鎧。 ああ、やっぱりコレで登場は不味かったな、と黄金の鎧を纏った彼は思った。 こうなったら戦うしかないだろう。 少なくとも、少年が逃げる時間を稼ぐまでは。 あるいは…… 「己は別に、助けてくれなんて言ってねぇ! 余計なことをするな!」 「そうか。だったら勝手に逃げろ」 「ふ、ふざけるな。狼は敵に背を向けて逃げたり……え?」 その台詞が終わる前に、少年は襟をつかまれ、持ち上げられる。 「狼男なら、まあ大丈夫だろ」 そう言って、盛大に振りかぶる。 「う、うわ、ちょっとタンマ!」 「待たない」 そして。 少年は思いっきりぶん投げられ、みるみるうちに小さくなって消えた。 それを見て、純白の騎士が感嘆の声をあげる。 「おおう、ナイス強肩だな。お前、プロ野球選手になれるんじゃないか」 「無理だよ。コントロールなってないし、それにコレが無ければあんなこと出来ない」 そう言って親指で自分を、いや鎧を指す。 コレを着て試合に出るなんて、ルール上無理だろう。 いや、そういう問題ではないのかもしれないが。 「なるほど、その鎧で身体能力を強化しているタイプか。俺と似た様なタイプだな。色々と違うようだが」 その純白の装甲は、機械部品が見え隠れしている。 異能の超科学により作られたパワードスーツのようなものだろう。 対して黄金の鎧は、意匠といい雰囲気といい、古めかしくも豪奢な……神秘的な雰囲気を持っている。 そういった意味でも両者は似て非なるものだった。 「だがしかし俺はどうすればいい? 昼食を邪魔されたこの憤りは何処にぶつければいい?」 肩を竦める純白に対し、黄金は足を踏み鳴らして怒鳴る。 『安心しやがれ。ンな事気にする必要がなくなるほど、オレが気持ちよぉくお昼寝させてやる!』 「ほう、子守唄でも歌ってくれるのか? なら伴奏は俺がしてやろう。御代は気にするな、出血大サービスだ、文字通りでな!」 売り言葉に買い言葉。 というか一方的に悪者だよなあ、と黄金鎧の中の人は兜の中でため息をついた。 形を見れば明らかだ。 昼飯泥棒をかばい、逃がし、そして被害者に対して(これは自分ではないが)悪口雑言で喧嘩を売っている。 まあ今更、悪い噂が二個や三個ほど増えたところで別に困ることはない。 むしろ問題はこれが長引くと午後の授業に間に合いそうに無いことだ。 昼飯抜きは確実だな、と思った。 「俺はアールイクス。通りすがりの正義の味方って奴だ。お前は?」 「デュラン。ゴルトデュラン……ただの、悪い魔法使いだよ」 そして、純白と黄金が激しくぶつかりあった。 金色蜘蛛と逢魔の空 第三話 魔狼の誇り 森の中で二人の戦士が走る。 Second movement "RAY-FORCE" 『ABRACADABRA!』 アールイクスの放つ光弾と、ゴルトデュランの放つ雷弾が空中でぶつかり合い、爆ぜる。或いは相手の鎧を穿ち、火花を散らす。 「くぅ、しびれるねぇこのビリビリ野郎!」 木を背にして笑うアールイクス。 一方、ゴルトデュランもまた石を背にしていた。 先ほどの息をつかせぬ銃撃の攻防から一転して、静かな緊張が場を支配する。 さしずめ、西部劇における決闘のような――そんな静寂。 それが、どれだけ続いただろうか。 そして動いたのは、どちらが先だったろうか。 跳躍。 お互い身を翻らせ、飛び出す。 空中で、閃光を伴った拳と、雷撃を伴った拳がぶつかる。 強大な二つの力がぶつかり、スパーク。 「ぬおっ!?」 「くうっ!」 爆発。 拮抗する力と力が互いに絡みつく蛇のように、その力を反発させ増幅させる。 木々がざわざわとざわめき、土煙が舞い、鳥達が慄いて飛び去る。 「ぐあああっ!!」 「うわああっ!!」 互いに悲鳴が上がる。 強大な爆発は閃光と雷電を伴い、互いの視界を白く染め上げた。 「っ!」 爆発で激しく弾き飛ばされるゴルトデュラン。 ごろごろと転がり、物質化させていた黄金の鎧が影へと戻り、消える。 「……っ、痛い」 体を起す、逢馬空。 「だがまあ、窮地は脱した、かな」 あのまま戦っていたら危険だった。 とてつもなく、強い相手だ。未だに拳が痺れている。 『あいつが、な』 ゴルトシュピーネは相変わらず大きい口を叩いていた。相手の強さを理解できないような頭ではないが、素直に認められるような性格でもなかった。 有体に言えば負けず嫌いなのだ。 『次は、負けねーぞ』 「あのな。そもそも本来、僕らは彼と戦う理由はないんだけど?」 今回はたまたまだ。 級友である委員長、秋森有紀の友達であるところのあの人狼の少年を助けるためにこうなったしまった、というだけ。 そうでもなければわざわざ戦う理由なんて無い。 『男にはな、理由なんざいらねぇ時もあんだよ!』 「うんそうだね。さて、彼の飛んでった方向は……」 『スルーされたっ!?』 慣れたものであった。 そしてゴルトシュピーネは影の中に消える。 空は、そのまま森の中へと消えた。 一方、時を同じくして、爆発で激しく弾き飛ばされたアールイクス。 おなじく爆風で転がりながらも体勢を立て直す。 「……逃げたか。ということは、俺の勝ちという事だな」 そう言って、武装を解除する。 一瞬の光の後、そこには天地奏の姿があった。 「しかし……」 ガサリとビニル袋を取り出す。 「取り返したはいいが、すっかりこんがりとコゲちまった! ……いや、オコゲはオコゲで美味いのか?」 そして一口食べて……奏は言った。 「前衛的(アヴァンギャルド)な味だな!」 そして、倒れた。 大の字で。 全身を痺れさせて。煙を吹いて。 まだ電撃が残っていた炭は、彼のお口には合わなかったようだった。 2 「大変だったようだねぇ、ボーイ」 双葉学園のとある廃教会にて、逢馬空は労いの声をかけられた。 空がこの廃教会を訪れたのは、空が所属する魔術結社――【聖堂薔薇十字騎士団(ドゥームローゼンクロイツオルデン)】への連絡のためだ。 聖堂薔薇十字騎士団(ドゥームローゼンクロイツオルデン)。それは薔薇十字団(ローゼンクロイツ)、黄金の夜明け団(ゴールデン・ドーン)、そして聖堂騎士団(オルド・テンプリ)の流れを汲む西洋魔術結社である。 その構成は一般的なGD系西洋魔術結社の例に漏れないが、特記すべきことは……双葉学園都市にロッジを持っている、ということだ。 多くの異能者達がいるこの学園都市には、当然ながら魔術系異能者達もまた多く存在する。 その中でも、古典伝統を受け継ぐ西洋魔術の使い手たち――魔術師たちは、自らの存在を隠している。 理由は、ただひとつ――“昔からそうだったから”だ。 些か拍子抜けの理由かもしれないが、事実としてそうなのだ。そしてそれが大切なのだ。 前世紀、魔術が秘匿されていた理由は多く分けて二つ。 魔術師だと知れれば、一般の者達の嘲笑や迫害に晒されていたと言う事。 そして、知識や秘伝を認めた者達のみに伝える為、ということだ。 1999年の事件により世界は一変し、過去よりも異能の力は人に知られることとなった。 何よりも、ラルヴァの大量発生により、魔術師達もまたより必要とされるようになり、魔術師だというだけで迫害や嘲笑を受けることも無くなった。 だがそれでも――魔術とは秘匿されるべきなのだ。 故に、双葉学園生徒としてこの街に住む魔術師の中にも、自らが魔術師――否、異能者であることを秘匿している者も多い。もっとも、それは絶対鉄則の掟ではない。少なくとも双葉学園に魔術師ということがばれた所で、それを咎と見る魔術師達はいないだろう。 そんな魔術師達の相互組合(コミュニティ)。それが、逢馬空の所属する魔術結社だ。 そこに在籍する魔術師として、空には連絡・報告の義務がある。 だが先日は急に秋森有紀から電話が入り、そしてそのまま彼女達を助けに走った。 そのことについて後悔するつもりは全くない。だが…… そのおかげで、予定を反故にしてしまい、姉に酷い目に合わされてしまった。 それを思い出すだけで、魂が軋む。 それを思い出すだけで、心が挫ける。 それを思い出すだけで、身が竦む。 恐怖に、だ。 圧倒的恐怖。絶対的恐怖。理屈も道理も何もかも超越した、真の恐怖だ。 人は、笑えるのだ。 怒りながら笑えるのだ。慈母のような、女神のような、天使のような笑顔を浮かべながら、平然と人の心魂をヘシ折る事が出来るのだ。 その事実がなにより恐ろしい。 そんな空をにやにやと笑いながら見ているのは、修道服(カソック)の上に袈裟を着込んだ、和洋折衷の怪しさ全開の神職者。 まず、仏教なのか基督教なのかが判別付きにくい。場所が教会であるなら後者なのだろうが、いかんせん廃教会なのでそれも怪しい。 胸にはロザリオではなくて、髑髏をあしらったシルバーのペンダント。両手にも手首、指とシルバーをゴテゴテにつけている。 染め上げた肩まである眺めの金髪に無精ひげと、そして眼帯。カソックから除く足は素足に下駄。しかも革ベルトで固定している。 そんなのが、廃教会の机に気だるげに腰掛け、見下ろしてきている。 怪しさが足を生やして歩いているような、そんな風体だった。 「学園を騒がせている、通称昼飯狩人(ランチハンター)……いちいちふたつ名をつけるのは学生ならではかねぇ? 僕にもかっこいいふたつ名考えてくれないかなあと常々思うなあ」 『てめぇにゃエセ神父で十分だ』 空の足元で影が蠢く。 影……ゴルトシュピーネの言葉に、神父は笑いながら返す。 「あれぇ? 僕にはちゃんとジョージ秋葉って名前があるんだけどねぇ。勝手に人の名前変えちゃいけないよ。ああちなみにアキハではなくアキバだ よ。そこ勘違いしないでね、アンダスタン?」 『てめぇがあだ名つけろって言ったんだろうがよ!』 「あれぇ? 僕そんなこと言ったっけ? 捏造はよくないなあ」 『てめぇ……!』 剣呑な雰囲気を、空の声が遮る。 「喧嘩はやめ。だいたい、アレに歯向かって勝てると思ってんのか、ゴルト」 『……ッ』 「あれぇ? ボーイはちゃんと自覚してるんだ、そっちのデビルと違って」 「そりゃあ、ね」 空は言う。 実際に一度経験しているのだ。冗談のような彼我の実力差を。 勝てない――少なくとも、今は、まだ。 「結構結構。そういう子は強くなる。お兄さん好みだよそういうの。君が女の子だったら放っておかないのに」 くっくっく、と笑う。 「今僕は男性として生を受けたことに両親と神様に最高級の感謝をしてるよ」 「そりゃ結構。あれぇ、でも君はとある可能性を失念してるよ? 俺が男女どっちもいけるクチって可能性に」 「もしそうならとうの昔に僕は被害にあってるだろ」 「あれぇ? でもこうは考えられないかな。青い果実が実るまで待ってる、とかさぁ」 笑いながらじっと空を見る秋葉。 『おい兄弟。いつかコイツ殺そう』 「そうだな、いつか絶対」 「あれぇ? 本人を目の前にそういう相談とか、君たちも大胆なんだねぇ」 笑う秋葉に、空はため息をつく。どうもこの男は苦手である。 「まあいいさ。大胆不敵大いに結構。いやいや、報告聞いてびっくりさぁ。 まさかねぇ、あのロードヴァンパイアの胤を使い魔にするとはねぇ、大胆不敵にもほどがあるって。上の人たちもびっくりしてたよ? あの宝石の吸血鬼。わかってるのかいボーイ? 君が何を手に入れたのか」 「手に入れた、とか言うなよ。彼女はモノじゃない」 空の言葉に、ジョージは両手をあげて降参のポーズをとる。 だがその口調は決して悪びれていない軽薄なままだ。 「失礼。失言だった。でもまあ許して欲しいねぇ、ぼかぁ一応神父だよ? 聖職者にとって、吸血鬼は不倶戴天の天敵だ。それを見逃してあげてるんだ、感謝してほしいものさ」 『よく言うぜ、生臭神父が』 「破壊僧だからねぇ。でもホント、よく考えた方がいいぜ? 今や彼女こそが“宝石”の後継者だ。君がその彼女の主ということは、つまりは君が……君こそが、“宝石”の吸血鬼の遺産を受け継ぐってことさ。デビルにとっちゃ喜ばしい財産かもしれないけどねぇ? ボーイにとっちゃ、重くてでかすぎる厄介な荷物だと思うよ?」 『だから寄付しろ……とか言うんじゃねぇだろうな』 「言わないさそんなこと。それが何かも判らないんだぜ? 不確定なリスクを背負い込むほど僕も、騎士団(オルデン)も余裕があるわけじゃないさ。だから僕たちは今のところ様子見だね」 「寛大な処置、感謝するよ」 「皮肉かい? ……って、皮肉言うような子じゃなかったっけ、ボーイは。 ああそうそう、皮肉で思い出したけどさあ。わかってるのかなあボーイズ。 キミ達のやってることは、犯罪者への肩入れにも等しいってさぁ」 「何がだよ?」 「話を戻したんだよ。昼飯のコソドロのワンちゃんの事さ」 「犯罪って……あれは子供の悪戯だろ」 「言葉遊びかい? でもさあ、万引きと窃盗は同じなんだよねえ、アンダスタン? そういうこと、君はまた空気を読まずに勝手に事件に首を突っ込んで、しかも悪者に加担している。それってどうなんだろうねえ?」 「加担しているわけじゃない」 「でも彼を捕まえるつもりはない。そりゃそうだろうねぇ、だって相手はラルヴァだ」 軽薄な笑いを貼り付けて、ジョージは言う。 「悪事を働くラルヴァは倒す。それが――双葉学園だものねぇ?」 そのからかうような挑発的な言葉に、しかし空は表情を変えない。 ただ一言、 「関係ないよ」 そう言って踵を返す。 「あの子は僕の、友達の友達だ。だから守るし、悪いことしてるなら反省だってさせるさ。そして…… 双葉学園が彼を倒すと言うなら、僕はそれに敵対するだけだ」 その言葉に、ジョージは笑った。とても楽しそうに。 「HA――! いいね、グッドだ。君は相変わらず正しく歪んでるねぇ、実にいい。悪魔を宿すに相応しい、素晴らしく歪んだパーソナリテイだ。実にグッドだよ。グッドすぎて目を背けたくなる。 で――疑問なんだけど。何故そこまで君は肩入れするんだい、たった一匹のラルヴァに。歪んでるよ、そういうの。君は――人間と怪物、どっちに肩入れするんだい? 君の立つべき場所は、どちらなのかなあ?」 「決まってるよ」 「ほう?」 「友達に肩入れするんだ、僕は」 3 「己(オレ)は頼んでない、そういうの!」 翌日の昼。 その肩入れはいきなり拒絶された。 「ていうか、投げるな! すごく痛かったぞ!」 「でも生きてるじゃないか、五体満足で」 「己(オレ)が人狼じゃなかったら死んでた!」 「人狼じゃないか」 「う……」 空の平然とした言葉に、人狼の少年は声を詰まらせる。 場所は公園。その少年はダンボールハウスで過ごしているらしい。作り直したダンボールハウスのそば、芝生に敷いたダンボールに座って腹を立てている。 「ほらほら、鋭斗くん。そんなこと言うもんじゃないよ?」 秋森有紀がなだめる。 「……っ」 有紀の言葉に、鋭斗はそっぽを向いて黙る。 「なにこの子、生意気。本当に有紀の友達なの?」 そうジト目で言う浅羽鍔姫。そんな鍔姫に対し、鋭斗は睨み返して言う。 「五月蝿い、チビ」 「あ」 それは危険ワードだった。 たちまち鍔姫の顔が紅潮する。 ぷっちーん。 「だれがマイクロどちびじゃーっ!」 鍔姫が叫んだ。怒鳴る鍔姫をあわてて空が押さえる。 「うん、落ち着いて。彼はチビといっただけでマイクロとは言ってないから」 「チビ言うなーっ! だいたいこのガキだってドチビでしょーがっ!」 「な、なんだと! 己(オレ)は良いんだよ、まだ成長期だ!」 「だから落ち着いて、どっちもどっちだから」 「「うるさいっ!!」」 二人の声がハモった。 「わぁ、息ぴったり」 『いや委員長、お前もお前で空気読め』 影の中から頭半分だけ出したゴルトシュピーネが突っ込んだ。 どうにも項にも、場はカオスであった。 狗守鋭斗(くがみえいと)。 有紀が友達になったという人狼である。 人狼とは、世界でもかなりポピュラーで、類似も多いラルヴァの一族、いわゆる「狼男」である。 日本にもいろんな種族の人狼がいる、いや……いた。 ニホンオオカミが絶滅したのと同じく、狼の一族はほぼ絶滅しているといってもいい。 だから、今この国にいる人狼は、外来種か、あるいは絶滅種の生き残りということだ。 そして、彼は後者であった。 人狼の一族、狗守の里の生き残り。狗神(イヌガミ)。 鋭斗は双葉学園にやってきて、そして――おなかをすかせて行き倒れ、有紀にごはんを貰い、知り合った。 「――ていうかなんでみんなでごはん食べてんの私達!?」 公園でシートを敷き。弁当を並べて食べながら、ふと我に返ったように鍔姫が声を上げた。 ノリツッコミであった。 「あふぁふぁ。ごはんをはべふほひはにひやらであふべきだけどにぎやらなのほぜっひょうするのはひがふ」 もしゃもしゃとおにぎりをほおばりながら空が言う。 「飲み込んでから言うっ!」 「浅羽。ごはんを食べる時はにぎやかであるべきだけどにぎやかなのと絶叫するのは違う」 「律儀に言い直した!」 突っ込みを終えてから、とりあえず座りなおす鍔姫。 「しかし……」 不貞腐れながらも座って弁当を食べている鋭斗を見て、空が言う。 「お前は誰でも餌付けするな」 「そう? 別に特別なことじゃないよ?」 「うん、いつもの応酬が微妙に違っているというか、それはかなり聞き捨てなら無い会話だと思うけど」 鍔姫が突っ込みをいれる。 というか、自分も餌付けされた事になるのだろうか、と鍔姫は内心ぼやく。 まあ、確かに昼飯に誘われたわけだし。 「というかそれなら最後まで面倒みなさいよ。そいつでしょ、最近巷を騒がせている、お昼ごはん泥棒。なんでそれと一緒に囲んでんのよ」 「まあ、私も鋭斗くんのごはん用意してるんだけど。でもいつも会えるってわけじゃないし」 有紀が困り顔で言う。 その鋭斗用に別に作った弁当は、今鋭斗がちゃんと食べている。 骨付きソーセージにミートボールと小さなハンバーグという、肉尽くしの弁当だった。 『ならソレはオレが食うからよこせ』 「己(オレ)のだ!」 『ああ!? だったら盗っ人みてーなことやめろってんだ』 「指図するな」 不貞腐れながら、鋭斗は弁当をかっ喰らう。 『ケッ』 その姿を見ながらゴルトは言った。 『プライドねーのかね、てめーは』 その一言に。 今度は、鋭斗が激昂した。 「なんだと!」 立ち上がる鋭斗。 「もう一度言って見ろ、己(オレ)が、誇りがないだと!?」 『……怒るってこたぁ、図星か? 図星を指されたら怒る。正論ほどムカつくことはないわなぁ』 「黙れ、蜘蛛野郎!」 『おっと』 空になった弁当箱を投げる鋭斗。ゴルトはさっと影に潜んでそれを回避する。 「お前に何がわかる……己(オレ)は。己(オレ)は!」 鋭斗は影を睨みつける。 その叫びに、静まり返る。 鋭斗の目尻には、涙さえ浮かんでいた。 「何かあったのか」 「何も無い!」 空の言葉に、鋭斗は叫ぶ。 「そうか」 空はただそう返答する。 「……ちょっとあんた、さっきから……」 鍔姫が立ち上がる。そして手を伸ばすが、鋭斗はそれをはたく。 「己(オレ)は」 鋭斗は言う。 「恩は忘れない。だけど、己(オレ)は……目的を遂げるまで、馴れ合うことは無い! 己(オレ)は、独りだ。独りでいい……!」 血を吐くような叫びをあげ、そして鋭斗は跳び去った。 「……」 空が弁当を食べる音だけが響く。 『なんでぇアイツ……短気っつーかヒステリーっつーか。 お前といい勝負だなぁツバキチ……あ痛!』 鍔姫に殴られた。 「誰が短気よ」 『そーいうところだっつーのコノヤロウ!』 てめーまだ悪魔抜け切ってねぇんじゃねぇか、とゴルトは言う。 それに対し、鍔姫はふんっ、と鼻を鳴らしながら影を踏みつける。 「仲いいね、二人とも」 「どこがよ有紀っ!」 「でも……大丈夫かな、鋭斗君」 有紀が、鋭斗の飛び去った方角を見て心配そうに言う。 「だいじょーぶじゃないの、元気いっぱいだし」 「うん……それならいいんだけど」 「何よ、ずいぶんと心配そうよね」 「私、聞いたんだけど」 有紀が言う。 「鋭斗君……一族を、その」 「……殺されたのか」 空が有紀の態度から、その事実を察する。 たった一人で双葉学園都市で生きようとする、十歳程度の少年。ラルヴァ。 なるほど、考えてみればその通りだ。 ラルヴァといえど親はいる。 ましてや、人並みの知性、文化を持ち、人と共存、あるいは隣り合わせで暮らすようなラルヴァならなおさらだ。 だが彼は、鋭斗は独りだった。まだ少年、いや子供なのに。 狼、それは「一匹狼」という言葉のイメージが先行してしまい誤解されがちだが、群れで生息する動物だ。 狼の特性を持つ人狼の民とて、例外ではない。 そんな人狼の少年が、ただ独りで双葉学園でホームレスのように生きている。 それを考えると、天涯孤独であろうことは間違いが無い。 「そんな……」 「うん。でも、だからさっき楽しそうにしてたから。だから余計に心配かな……」 「あれでっ!?」 『楽しそうっ!?』 鍔姫とゴルトの声が同調する。 あれで楽しそうだったんかい、と。どう見ても機嫌が悪そうだったが。 「わかるよ。鍔姫だって最初あんなかんじだったし」 「へ?」 「似てると思うよ確かに、鍔姫も鋭斗くんも」 「どこが?」 「うーん、今の鍔姫とはちょっと違うかな? 最初の頃」 「最初……」 「なんかさ、ちょっと張り詰めてたってかんじで」 有紀は言う。 そう、確かに鍔姫は転校して来たときは、とにかく気を張っていた。 だがそれでも、それを気取られぬように必死だったはずなのだが。 (……鋭いなあ) 最初から見透かされていたのかと、鍔姫は嘆息する。 だからこそ気を利かせてくれて、そして自分は救われたのだろう、と。 だったら。 遠慮なく踏み込んでくるこの委員長と、空気を読まずに触れてくるこの男に――あの生意気な少年も救われるのだろうか? それは願っても無いことであり、そして……少し、嫌な気分がする、と鍔姫は思った。 なんだろう、この気持ちは。 それは……嫉妬だろうか。 (いやだな、薄汚いな、私) この二人が、自分以外の誰かを救う……それが少しだけ嫌な自分がいる。 独占欲、か。 鍔姫は、そんな裡に生まれた心を流して消し去ろうとするかのように、水筒からお茶をコップに注ぎ、飲み干した。 4 「空くん、大変!」 授業が終わった時。 珍しく有紀が血相を変えて飛び込んで来た。 「鋭斗君が……」 「なに、風紀委員にでもとっ捕まったの?」 鍔姫が興味なさげにいう。そしてそれに対する返答は、それどころではないものだった。 「討伐隊が組まれるって!」 「……」 討伐隊。 そう、討伐……だ。 物騒すぎる響き。それは、双葉学園が、昼飯泥棒のラルヴァをついに、「倒すべき対象」と認めたということだ。 ……殺し、滅ぼすべき敵だ、と。 「……そんな!」 その物騒な言葉に、鍔姫が立ち上がる。 「なんで討伐隊って、そんな」 「鋭斗くん――人を、殺したらしいの」 「馬鹿な!」 鍔姫が叫ぶ。信じられない、というように 「私だって信じてないよ。でも……そういう話で動いちゃってるの」 「まさか昨日の喧嘩で自棄(やけ)になってとか……」 「どうだろうな。ていうか……」 空が言う。 「殺されたのは、誰だ?」 「え? それは……」 「秋森、質問だ。それは、醒徒会が公式に組む、作戦(ミッション)としての討伐隊? それとも……生徒有志による討伐隊?」 二つには、大きな隔たりがある。 前者はまさに双葉学園の正式な任務だ。だが、しかしいかんせんそのような任務となると、お役所仕事……とまではいかないが、動きに時間がかかることも珍しくない。 対して後者は、事件が起きた時の現場の判断で組まれることが多い。 「確かに人がラルヴァに殺されたのなら、学園が討伐隊を組むのも当然だろう。 だけど……なら、誰がいつどこで殺された? そんな話は僕は聞いてない。浅羽、お前は?」 「わ、私も……」 「そうだ。人が殺されたのなら、噂になるはずだ。だがそれが無い。そして、なのに討伐隊がこうも速やかに組まれる……あべこべだ、順番がおかしい。昨日の今日だ。なのに…… まるで、既成事実を作ってしまえ、とばかりに」 「どういうこと……?」 理解が追いついていない鍔姫に、空は言う。 「一度討伐隊が組まれてしまえば、鋭斗に弁当を奪われて憤懣やるかたない連中が次から次へと討伐隊を編成するかもしれない。組まずとも。立ち上がり狙うだろう。 そしてそれを狙っている者がいる……そうでなければ、こんな動きは理にかなってない」 「……うん、さすが空君、冷静だ」 有紀が席につき、深く呼吸する。 「駄目だな私、あせっちゃった」 「仕方ないよ有紀。友達が狙われてるんでしょ。冷静になれるのは空ぐらいなもんよ」 空気読めないし、と付け加える。それが逆に助かったけどもね、とも。 「……」 空は思い出す。 先日のような、あんな強い相手……アールイクスのような異能者たちが何人も集まって、鋭斗を狙うなら。 討伐しようとするなら――彼は万に一つも助からないだろう。 そして、それを自分が前のように邪魔をしたらどうなるか。明白だ。 勝てない。 逃げられない。 それどころか、自分もまた、正体不明のラルヴァとして――斃される展開が容易に想像できた。 『……』 影の中で、ゴルトシュピーネもまた無言。それが何より雄弁に語っている。 益が無い。 意味が無い。 普通に考えれば。ただ迷惑をかけられただけの一匹のラルヴァのために、命を掛ける道理など全く無い。 そう、そんな道理など、全く無いのだ。 だが―― 空は立ち上がる。 窓の外を見て。 「どこいくの?」 「決まってるよ」 そう、確かに意味が無い。 だからといって、動かぬ理屈にはならない。 一度、一緒にごはんを食べた仲だ。 険悪で剣呑で騒がしい食事だったが、決して――不味い食事ではなかった。 ただそれだけ。 それだけで――命を掛けるには、充分の理由だ。 トップに戻る 作品保管庫に戻る
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「コーストガード」 【軍人、上半身裸】 筋肉度 ★★ 腹打ち度 ★★★ 軍人度 ★★★★★ 韓国映画。始まって13分あたりのボクシングシーンは必見。 海上ボクシング。 海の上に有刺鉄線のリングを作りスパーリングをしている。 やせた男たちだが、軍服と使い古したグローブと、 海の上と言うのがかなり高得点。 33分あたりにヒロインのアニキと町の若者にボコボコにされる シーンがある。腹殴られ、ボディーに膝を入れられる。 なかなかいい角度で入っているが、アップで無いのが残念。 1 22くらいに真夜中、波打ち際で暗視カメラをつけながらボクシングをする シーンもあるが、かなり暗い。 軍人が好きな人にはいいかも。訓練とかは多い。 戻る 【用語説明】 「ボクシング」 ボクシングの試合、ボクシングスタイルのファイトがある。 「ムエタイ」 ムエタイ・キックボクシングスタイルのファイトがある。 「ストリート」 路上の喧嘩、ストリートファイトがある。 「軍人」 軍人のファイト、トレーニングがある。 「リンチ」 主人公などが集団にやられてるシーンがある。 「一方的」 主人公などが一方的にやられるシーンがある。 「上半身裸」 どちらかが上半身裸になっているファイトがある。 「拷問」 縄や手錠で体を拘束され拷問をかけられるシーンがある。 「人質」 主人公が人質を取られている設定がある。 「八百長」 主人公が八百長試合をするシーンがある。 「賭けファイト」金を掛けたファイトがある。 「トレーニング」主人公などがトレーニングしているシーンがある。
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【名前】来須圭悟 【性別】男 【種族】人間 【出典】未来日記 桜見署に所属する警察官で役職は課長。 非常に気さくで冷静な性格をしており、頼りがいのある好人物。 警官という立場から、日記所有者たちによる殺人ゲームを止めるために行動する。 デウスによるルール説明で日記所有者が集められた際、 3rdを倒したことで他の所有者たちが次々と雪輝に狙いを定める中、唯一彼の保護を公言した。 後に、その言葉通り9thに襲撃された天野雪輝と我妻由乃の前に現れ、共に9thを撃退。 それ以後は雪輝、由乃と3人で『未来同盟』と名付けた共同戦線を組む。 警官としては非常に優秀で、『ゲーム』主催者側には優勝候補の一人と目されている。 既婚者で、結婚式場で働く妻と病気で入院している息子がいる。 子供の頃、欲しかったプラモを万引きして父親にボコボコにされた経験がある 彼自身はこれで懲りたようだが、実は当の父親もその頃空き巣に手を出していた。 父親はまともな人生を送れず、最終的に蒸発の末にのたれ死んでしまった。 この時抱いた『どうして(自分が親父にボコられたのと同じように)親父をボコる奴がいなかったんだろう』 という思いが、彼が刑事を志す大きな理由となっている。 所持日記は『捜査日記』警官として自身が関わった事件の未来の捜査状況が表示される。 有名なテロリストである9thや、通り魔犯である3rdにはとても有効で、予知できる範囲は非常に広範である。 その反面、捜査や犯罪と無縁な人間の情報は入ってこないのが欠点。 彼が所属する桜見署管轄外の情報も表示されないが、(原作での)所有者が桜見市に集められているため問題ない。 しかしバトルロワイアルは桜見市外で行われていた為に捜査日記は機能しなかった。 以下、ネタバレ注意 対応するregion、endregionプラグインが不足しています。対になるようプラグインを配置してください。 登場ロワ 好きな作品ベスト10でバトルロワイアル 生存中 現在の登場話数01 殺害者数01 優勝狙い